「せかキラ」第39話に登場する「真紀の部屋の最寄り駅」。
この秋吉World第4の駅として描かれた駅にも
従来と同様に、モデルとなる駅が存在するとするならば、
万葉はどの駅に降り立つ事になるのだろうか?
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調査レポート002.において秋吉家最寄り駅は解明済みであるが、当サイトにおいては是を公開しない方針である。そこで、この調査については、秋吉家最寄り駅に比較的近い、「国府駅」を基準として「約40分前後で到着した駅」という解釈で検証する事とする。
今回登場した真紀の部屋の最寄り駅を「Y駅」と仮称し、この駅に関連する情報を読みとってみよう。
せかキラ7巻 (第39話) 73p5コマ目より: | ・Y駅には南口がある。 |
同18p3コマ目より: | ・Y駅には、ホームより階下へ向かう階段がある。 ・ホームがカーブしている ・さらに内側のカーブに少なくとも2本の線路が存在する ・ホームに隣接する内側の線路にはホームが平行位置に無いか存在しない(通過線である)ものと思われる。 ・内側にいる列車は乗客用ドアが最低4つある ・客室窓には十字の桟がある。 ・同列車の屋根に半円上のクーラーユニットが1台設置されていると思われる。 |
同19p1コマ目より: | ・(5文字非公開)より40分でY駅に到着する。 |
同p2〜3コマ目より: | ・Y駅南口及びその周囲には樹木が植えられている。 |
これらの描写や他の作品内に登場する物や言葉、今までに調査した「東岡崎駅及(4文字非公開)」からY駅の場所を順を追って検証してみよう。
まず、名古屋鉄道の時刻表より国府駅から約40分で到着する駅を上げてみよう。ここで言う「約40分」とは総移動時間の事で、「乗車時間の累計が40分(乗り継ぎ時間不含)」という意味ではない。また、国府駅より東方向に向かう列車に乗った場合は何れも12分程度で終着駅に着いてしまうので除外すると下記の表のようになる。
移動方法 | 約40分で到着する駅 |
国府駅より名古屋本線を特急乗車で | 神宮前駅〜新名古屋駅 |
国府駅より名古屋本線を急行列車で | 鳴海駅 |
国府駅より名古屋本線を普通列車で | 東岡崎駅 (但し、30分程度で到着後乗り継ぎ不便で移動できず) |
国府駅から特急、新安城乗り継ぎで | 西尾線西尾口駅〜西尾駅 |
国府駅から特急、知立乗り継ぎで、 | 三河線刈谷駅〜小垣江駅 三河線三河八橋駅〜若林駅 |
また、先ほど除外した終着駅は何れも他社線との乗り継ぎが可能な駅なので、他社線に乗り継いだ場合は下記の表のようになる。
移動方法 | 約40分で到着する駅 |
国府駅より豊橋駅JR線乗り換えで | JR東海道本線新居町駅〜舞阪駅 JR東海道本線三河塩津駅〜幸田駅 |
国府駅より豊橋駅・豊橋鉄道渥美線乗り換えで | 豊川鉄道高師〜植田駅 |
国府駅より豊川稲荷駅・豊川駅乗り換えで | 豊川駅より乗り継ぎ不便で移動できず |
次に、由希の経営する美容室「MONOPOLY」から秋吉家までの距離を検証してみよう。せかキラ5巻160p5コマ目の藤沢(兄)の台詞として「カノジョ遠くに住んでんでしょ?」の補足として「車で1時間以上も離れたトコってききましたよ?」と記載されている。また、せかキラ1巻153p5コマ目に地下鉄の入り口が描写されており、中京地区で地下鉄があるのは名古屋市街区のみであるため「MONOPOLY」も名古屋市街区内にあるものと考えられる。
さらに、せかキラ39話25p6コマ目の真紀の台詞として「兄さんのお店が人手不足で困ってたからなんとなくこっちに戻ってきた」との発言があり、職場が決まっていての引越だった可能性が高いので、比較的職場に近いところに居を構えるというのが一般的ではないだろうか。
以上の3点をもう一度整理すると、真紀の部屋は、
この条件は、少なくとも「MONOPOLYから秋吉家への方向」と「秋吉家(最寄り駅)から真紀の部屋への方向」は逆向きで無ければ満たすことができない。つまり、秋吉家最寄り駅(及び国府駅)から名古屋方面の列車に乗らないと条件が満たせない事になるのである。また、車で1時間強走ることによって到達できる距離は、平均的な交通量の道であれば40〜60km程度であり、東岡崎駅は距離的に近すぎる感がある。であれば万葉が降り立った駅は鳴海駅もしくは新名古屋駅〜神宮前駅駅の何れかであることが予想されるのではないだろうか。さらに言えば、調査ファイル001で検証したように、新名古屋駅は地下ホームなので、せかキラ39話18p3コマ目の様にホームに屋根がついていたり、架線柱が設置されていたりするとは思えない。またホームの構造の描写を観察すると、ホームから下へ降りる階段があるため、調査ファイル001の時の検証と同様に金山駅も神宮前駅も該当しない物と考えられる。また、ナゴヤ球場駅も特急列車が停車せず、乗り継ぎが不便で概ね40分の範囲を逸脱する感がある。つまり、時間的条件を満たしホーム構造を確認しえない「鳴海駅」が真紀の部屋の最寄り駅である可能性が最も高いと思われるのである。
前回・前々回と同様に現地において検証した結果、以下のことが判明した。
つまり、鳴海駅は「Y駅」たる条件を満たせず、また描かれている列車は名古屋鉄道の車両で無い可能性があることが判明した。
しかし、秋吉家最寄り駅が名古屋鉄道の駅であることは以前の調査で既に明らかである。そこで、名古屋鉄道名古屋本線が他社の路線と隣接・併走する区間が無いか地図で確認したところ、東枇杷島駅〜神宮前駅及び伊奈駅〜豊橋駅間で東海旅客鉄道株式会社(略称:JR東海)の東海道本線又は中央本線と隣接・併走していることが判明した。だが伊奈〜豊橋間は純然たる併走区間と名古屋鉄道とJR東海飯田線の併用区間があるだけであり、作中の描写の様な構図が得られることはない。であれば「検証(1)」による時間条件を満たす「金山駅・神宮前駅」のホーム頭上連絡通路部分を簡略して描かれている可能性があると思われるのである。
金山駅は2番線〜3番線のホームは描写のように弧を描いているが、JR線と隣接する1番線はあまり弧を描いていない。また、内側に見えるJR線にもホームが存在する。 | ||||||||
金山駅1番線のホーム豊橋端へ行くとJR線のホームが先に無くなるため、描写のように内側の路線は線路のみとなるが、1番線ホームそのものが描かれているほどは長くなく、またホームも弧を描いてはいない。 | ||||||||
神宮前駅はホームが弧を描いていない。また、隣接するJR線もホームは無いものの直線であり、作中の描写とは明らかに異なっている。 | ||||||||
また、名鉄神宮前駅〜新名古屋駅間を併走するJRの車両についても「クーラー屋外ユニットが1台・乗客用ドア4枚・客室窓に十字の桟」の3つをすべて満たす列車は確認できなかった。 |
つまり、駅構造の描写を簡略化したとしても、同じ構図は得ることができず、さらに描写されている列車はJR東海の東海道線にも走行していない可能性が高い。以上により、「Y駅」として描写された駅のモデルは名古屋鉄道沿線には実在せず、中京地区では見つけることができないと結論づけざるを得なかったのである。
では、真紀の部屋最寄り駅の風景が現実に存在しないものとして、日高先生がどの駅をイメージして作中に登場させたのかを、「最寄り駅として描かれた描写的特徴以外」の情報より検証してみよう。駅及びその周辺の描写以外で場所を特定するのに使えそうな情報をまとめると、
となり、これらの情報より該当しそうな駅は「検証(1)」で候補に挙がった「鳴海・神宮前・金山・新名古屋」の4駅である。
このうち、鳴海駅は出入り口が一つしかないためあえて「南口」と指定されることは無いだろう。また、新名古屋駅には南改札口があるものの、駅そのものから出るための出入り口として「南口」は存在しないし、名古屋駅から歩いて5分(4km/hで計算して約340m)の場所に真紀が住んでいるとは考えにくい。
以上により、神宮前駅は「西口・東口」、金山駅は「北口・南口」の2箇所を持つ駅なので、文字通り金山駅の「南口」、もしくはその他3つの何れかを想定して書かれたものではないだろうか。
金山駅コンコースは名古屋鉄道・JR東海の共同利用で、共用部分には「金山総合駅」の記載がある(写真右側、名鉄の看板が見える部分が純然たる名鉄金山駅舎)。コンコースへの開口部が二つあり、広場のような空間があることから作中のイメージとはほど遠い。 | |
同、北口。こちらはオフィス街・繁華街方向への出口で車や人通りが多く、作中のイメージとは異なる。 | |
神宮前駅西口。駅ビル「名鉄パレ」に駅舎への入り口が設置されており、タクシー乗り場やバス停が設置され、こちらも作中イメージにはほど遠い。 | |
同、東口。こちらも駅ビル内の出入り口だが「こぢんまり」としており、また周囲に樹木が植えられている。決して作中描写に似ているとは言い難いが、他の3つよりはイメージに近いと言えるのではないだろうか。 |
これにより、雰囲気的には「神宮前駅東口」、出入口名で言うならば「金山駅南口」が「真紀が住んでいる街」のイメージではないかと予想されるのである。
金山駅南口からの風景。正面の道路突き当たりにマンションのような建築物もあるので、とりあえず居住区であるとも言えるが、どちらかというと「繁華街の外れ」の感もする。 | |
写真右手踏切の奥が神宮前駅東口であり、近距離にマンションらしき建築物がいくつか建っている。 |
各々の駅周辺の地図と駅からの光景を照らし合わせると「真紀の住む街」のイメージに該当するのは「愛知県名古屋市熱田区金山町,新尾頭,花町,沢上」又は、「同熱田区三本松町,花表町」であると思われるのである。
ところで、「作中に描写する駅の構図を、完全な想像で制作して描いた」というのは一般的には考えにくいものと思われる。なにかしら写真などの資料を元に描かれた物であるならば、必ずや”元”になった現実の駅があるに違いない。従来の調査レポートもこの思想より調査し、名古屋鉄道沿線でモデルとなった場所を突き止めてきたのであるが、今回はその地域的な枠を取り除いて考えてみよう。
名古屋鉄道及びJR東海の車両は乗客用ドアが2枚から3枚の列車しか走っていないものと思われた。であれば、ドアが4枚ある車両は名古屋地区以上に移動人口が多く列車が混みあう地域に違いない。そこで確実に名古屋地区以上の人口密集地帯である東京へ向かい、運転交代のためホームで待機していたJR東日本の運転士の方に、「駅が描写されているコマ(のコピー)」を見てもらい、該当する駅がJR東日本首都圏管内にあるか訪ねたところ、ほぼ即答で回答された。
「これは、おそらく”飯田橋駅”ですね。」
<飯田橋駅> | |||
東京都千代田区飯田橋4丁目にあり、東日本旅客鉄道株式会社(略称:JR東日本)に属する千葉〜中野間を結ぶ総武線の停車駅で帝都高速度交通営団(略称:営団)の地下鉄有楽町線・東西線・南北線との乗り継ぎ駅。ここで言う”総武線”とは通称であり、実際は千葉〜御茶ノ水間が総武本線、御茶ノ水〜中野間は中央本線に属するが、一般的には”総武線の黄色い電車”として親しまれ千葉から都心方面への通勤通学の足として利用されている。 |
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その運転手曰わく、
斯様に断言されたのである。そこで飯田橋駅に向かい、作中の描写と同じ構図が本当に得られるのかを確かめることにした。
右の写真と作中の描写を比較すると、カーブの弧の描き方・ホームの構造・列車の形(天井部、側面部)にかなりの類似点が認められる。 | |
また、ホーム屋根部に繋がっているかのように描写されている曲線を描いて下に折れている架線柱構造物も確認することができた。 |
作中に描かれた車両は、大阪地区においても運用されていることが確認されているが、ホームの情況や路線の構造などが、作中のものと類似しているものは現在の所確認し得ていない。また、急行線側の架線柱の形状が異なるが、これは架線柱そのものが近年更新されたものであると推測される。以上により確証があるわけではないが真紀の部屋への最寄り駅として描写された背景は「JR東日本総武線・飯田橋駅」であると考えて良さそうである。
では、なぜ日高先生は「飯田橋駅」を「真紀の部屋への最寄り駅」として描かれたのであろうか?おそらく、「飯田橋駅が白泉社のある”神田淡路町”より電車で2駅」であるという事実や、「真紀は今の部屋に来る前は東京で生活していた」という設定とは何ら関係なく、「単なる偶然で飯田橋駅の写真を持っていた」か、もしくは「所有する版権フリーの素材集に飯田橋の駅があった」かの何れかであろうと予測される。なお、一応検証のために「素材集」と称される本を各種調査しているものの、今回の駅の描写と同じ構図が掲載されたものは現在までに確認する事はできなかった。