彼らは出会い、そして約束した。
一人は和平を成すために
彼女がその死を予告しながらも、それが正しき道ならばとまっすぐに進むことを約束した。
一人は報われぬ恋と知りながらも
自らの親友を殺さぬと誓いを立てた。
そして彼女は彼らが生きることを願った。
その先に不幸な未来が生まれないことを願って
けれど運命はそれをあざ笑う。
彼らのもがきはまるで水面に生まれたさざ波のごとく、何の影響もないのだと言わんばかりに・・・
ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜
九十九がれいげつを出立してからほぼ一日後、彼のテツジンはYナデシコとの合流を果たした。
誘導されてナデシコ内に入った九十九が見たのは驚くほどの歓待ぶりであった。
「なんだ、これは!?」
と九十九が驚くのは無理もない。
『白鳥九十九和平特使さん、ようこそナデシコへ』
『歓迎♪』
『レッツ・ゲキガイン』
『祝ご婚約』
などののぼりが立っていて、しかも赤絨毯が敷かれていた。
そしてテツジンを降りた九十九を待っていたナデシコクルーもまた、彼を歓迎した。
九十九「自分は木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパおよび他衛星小惑星国家間反地球共同連合体突撃宇宙優人部隊少佐・白鳥九十九です。
今回の和平の調整役として参りました」
ユリカ「ようこそ、ナデシコへ。
私がナデシコ艦長、ミスマル・ユリカです。
今回、地球側の和平の調整役を仰せつかって参りました♪」
アキト「っていうか、勝手に買って出ただけだろうが・・・」
ユリカ「違うよ〜ちゃんと了承を得てきたもん!」
アキト「得てきたって、『和平決めて来ちゃいます♪』って連合総会に通信を送っただけだろうが・・・」
ユリカ「そうだとしてもこういうのは形から・・・」
なんか、ナデシコ側の出迎えも早速痴話喧嘩を始めていたりする(笑)
だが、男性の声の主の方を誰か気づいた九十九がアキトに話しかける。
九十九「君は・・・確か月で戦ったときの・・・」
アキト「え?ああ、そうです」
九十九「あの時は名前を聞きそびれたな。
ずっと謝りたいと思っていた。
ユキナを保護してくれていたらしいし。
名前を聞かせてくれるかい?」
アキト「はい!
テンカワ・アキト。パイロット兼コックッス」
二人は固い握手を交わした。
ふと、あることに気づく九十九
九十九「おや、君は・・・」
アキト「なんッスか?」
九十九「君、武術の心得でもあるのかい?」
アキト「わかりますか?」
九十九「まぁね。」
とお茶を濁した九十九だが、彼がどの流派を学んだかは言わなくてもわかる。
九十九「なかなか筋は良さそうだね」
アキト「そんなことまでわかるんですか?」
アキトにとってはほとんど手合わせもせずに握手しただけでそこまでわかってしまう九十九が不思議でならなかった。
しかし、わからないはずはない。
自然な握手の時の腕の動き。
淀みなく力の移動が出来ている。
握手したときもこちらが入れた力にすぐに反応し、抜いた力にもすぐに反応した。
ちゃんと全身に意識が行っている。
ほとんど無意識に行っているが、それは日常レベルでも意識して筋肉を使っている証拠だ。
ましてや日頃自分が鍛錬として行っている方法ならばわからない方がおかしい。
九十九「よっぽど良い師に従事したんだね」
アキト「はい!」
アキトは破顔して答えた。
良い笑みだ。
迷いも全くない。
九十九にはこの少年にこれほどの信頼を与えることが出来る人物など一人しか思いつかなかった。
『さて、真実を言うべきか、言わざるべきか・・・』
九十九は迷った。
ここで木連にアマガワ・アキがいるというのは容易いが、彼らはショックを受けるのだろうか?それとも案外素直に納得するのだろうか?
仮に後者だとしても、アキ本人に自分の去就をナデシコクルーに教えないようにと釘を差されているので言うのも憚られた。
と、九十九が色々悩んでいると・・・
ミナト「・・・残してきた彼女でも気になりますか?」
九十九「み、ミナトさん!?」
ちょっとオーラを発しているミナト登場(笑)
九十九「ミナトさん、いつからここに!?」
ミナト「最初からいました!
それとも私は目にも入らないような存在だって言いたいのね!」
九十九「そんなことありません!
えっとですねぇ〜〜
そのですねぇ〜〜」
オロオロする恋人を見てミナトは怒るのも馬鹿らしくなったのか、クスクス笑いだした。
ミナト「冗談ですよ、冗談♪」
九十九「あははは、よかった〜〜」
ミナト「でも、浮気をしたら絞め殺すわよ!」
九十九「はい・・・」
一瞬般若の面の様な顔を見せたミナトを見て九十九は冷や汗をかいた。
周りの人間は『既に尻に敷かれているなぁ・・・』と異口同音に思ったらしい。
と、そこに引き続き九十九を歓待する人物が現れる。
ユキナ「お兄ちゃん♪」
九十九「ユキナ!」
和平の使者として地球圏にやってきたあげく、囚われの身になりそうになっていた少女白鳥ユキナである。
お兄ちゃん子の彼女は力一杯九十九の首筋に抱きついた。
九十九「ユキナ、元気だったか?」
ユキナ「元気も元気♪」
九十九「ミナトさんやテンカワ君に匿ってもらってたんだろ?
失礼なことをしなかったか?」
ユキナ「失礼な事って何よ!私は・・・」
九十九「俺の手榴弾が一個無くなっていた」
ユキナ「う!」
九十九「何に使おうとしたんだ?」
ユキナ「あ、あはははは・・・いや、その・・・」
九十九「あれほど武器をおもちゃみたいに扱うなと言ってあったのに!!!」
ユキナ「い、いたひぃ、お兄ちゃん〜〜許して〜〜」
九十九はユキナにゲンコツぐりぐりをかまし、ユキナは涙目になった。
兄弟はじゃれ合いを見てナデシコクルーの誰もが安堵の表情を見せた。
和平はきっと上手く行く。
そんな風に考えていた。
けれど・・・
たった一人、そんな楽観視をしていない人物がいた。
それは誰あろう、白鳥九十九自身であった。
『皆さんに見てもらいたいものがある』
そう言って九十九はみんなを呼び寄せた。
何事かわからないが、一応相手は和平の使者
その彼が見せたいものがあると言うからにはそれなりの対応をしなければいけない。
主立ったクルーは会議室に集められた。
アキト「ゲキガンガー・・・熱闘編?」
その呟きを聞いたクルー一同は少し嫌な予感がした。
ちなみにルリとラピスはブリッジを空けるわけには行かないと言って辞退した。
ルリ「ミイラ取りがミイラになりたくありませんから」
ラピス「右に同じ」
ユキナ「本当、大の大人がアニメなんてバカみたい!」
ルリ「・・・へぇ」
ユキナ「何よ。その『木連人はみんなゲキガンガーが好きなんだと思ってました』ってな顔は!」
ルリ「被害妄想ですよ」
ユキナ「なんですって!
ムキィ!!!」
珍しくケンカしそうになった二人を見て・・・
ラピス「バカみたい」
ルリ&ユキナ「え?」
ラピスに見事にお株の決めゼリフを奪われた二人であった(笑)
持ってこられた画像ディスクが相当古いものらしく、ウリバタケが四苦八苦しながらセッティングしていた。
ウリバタケ「今時、βなんて規格のディスクを持ち込まれてもなぁ〜
まぁ俺様のコレクションをおかげで見れるんだ。
感謝するように!」
自分のコレクションが披露できて鼻高々のウリバタケをよそに、セッティングできたと見るやアキトはさっさとディスクを挿入した。
彼自身楽しみにしているみたいだ(笑)
もっとも、おもしろくない人もいるみたいだが・・・
ゴート「なんで俺まで・・・」
プロス「まぁまぁ、そう言わずに」
ホウメイ「相手は特使なんだ。それなりに歓迎しなきゃねぇ」
ヒカル「どちらかというと、焼き餅を焼いてるって感じですか?」
ゴート「な!」
リョーコ「まぁ昔の恋人はあっちでラブラブだしなぁ。
それが和平特使ときちゃ、おもしろくないはずだよなぁ」
ゴート「俺は仕事に私情を挟まない!」
イズミ「私情を挟まない・・・らしいじょう・・・なんちって」
とまぁうるさい外野がいるのでさっさと再生ボタンを押すアキト
そこにはやはりというか、九十九が編集したゲキガンガーのダイジェスト版が映し出されていた。
しばし後・・・
アキト「あ〜〜やっぱりゲキガンガーは良いなぁ♪」
ゲキガンガーの良さを再認識したアキト。
九十九も少し誇らしげにしていた。
問題はナデシコクルーの反応であるが・・・
ユリカ「・・・アキト」
アキト「ん?」
ユリカ「なんか、後ろの方が大事になってるんだけど・・・」
アキト「え?」
ユリカに促されて後ろを振り返ったアキトが見たものは・・・
一同「ブラボー」
パチパチパチ!!!
スタンディングオベーション状態であった。
ゴート「いやはや、たかがアニメと侮っていたが・・・」
プロス「努力、友情、挫折、復活、勝利
我々が失った何かがそこにはあります」
ジュン「ええ、語りかけてくるテーマが僕たちの心を・・・いや、魂を揺さぶります!」
メグミ「役者としてはまだまだな私でも制作者達が作品に込めたテーマが痛いほど伝わってきます」
ミナト「やっぱり愛でしょう、愛」
なんか、異様に盛り上がっている。
自分達が和平のために利用したゲキガンガーに見事にハマってしまったのだ。
アキト『どうするんだよ、これ』
ユリカ『仕方がないよ。このまま盛り上げるしか・・・』
アキト『けど、ユリカはハマらなかったのか?』
ユリカ『いや、ほら・・・アキさんの記憶とか見てるし、』
アキト『・・・だよなぁ』
ユリカ『別に嫌いじゃないけど、やっぱり信じているからこそ盲目的に肯定しちゃまずいと思うし』
なまじ火星の後継者なるものが未来の世界で発生している現実を知っているからこそ、素直に喜べないアキト達であった。
ユリカ「ということで、これからゲキガンガー祭りを始めます」
アキト「レッツ」
一同「ゲキガイン!!!」
ということでクルー一同の熱い要望に応えてここにゲキガンガー祭りが始まるのであった。
ウリバタケ「さぁ、いらはいいらはい!
ゲキガンガーヨーヨー釣りに
ゲキガンガー綿飴
ゲキガンガー風船に
ゲキガンガーメンコ
ゲキガンガーお面だよ!」
ヒカル「さぁ、ゲキガンガーの4コマ漫画に
アンソロジーだよ♪」
メグミ「ここではコスプレの撮影会を行っています〜〜
プレイヤーさんには触らないで下さい〜〜」
ジュン「視線こちらに下さい〜」
リョーコ「あいよ!」
イズミ「1000秒黙る、シーー千なんちって」
ゴート「オヤジ、ラーメン」
プロス「特製ゲキガンガーラーメンお待ち!
特製ゲキガンガーナルト入りだよ」
ホウメイ「イカ焼き、リンゴ飴はいらんかね!」
とまぁ既にお祭り状態になっていた。
ユリカ「え・・・ちなみにもうまもなくゲキガンガー全話ぶち抜きマラソン上映会を第1会議室で行いますので皆様の振るってのご参加をお願いします(汗)」
アキト「皆さん、会議室にお急ぎ下さい〜〜(汗)」
こういうとき、概して異様に盛り上がる周りを真のファンはなぜか一歩引いて見てしまうのであった(笑)
班員その1「お〜い、ここにあった箱、知らないか?」
班員その2「箱って?」
班員その1「あったろ、こんなでっかい箱が!」
班員その2「でっかい箱って、あのレッツゲキガインって書いてあった箱か?」
班員その1「そうだよ。あれ、特使の持ち物だろ?
なくなったらまずいんじゃ・・・」
班員その2「そりゃそうだけど・・・」
班員その3「おい、箱ならなんか白鳥さんがみんなに配るんだって運んでいったけど?」
班員その1「あ、それならいいや」
ウリバタケ「おい、お前ら!
ゲキガンガーの全話ぶち抜き上映会をやるってよ!」
班員その1「え!?本当ッスか♪」
班員その2「やった♪」
ウリバタケ「もうすぐ1話放送らしいから遅れるなよ!」
班員全員「はい!!!」
こうして九十九がれいげつから持ってきた箱のうち、一番大きい箱の所在がわからなくなっていた。
そしてその事に対して注意を払っている者は誰もいなかった・・・
一同「夢が明日を呼んでる〜♪」
というオープニングアニメを一緒になって歌うクルー一同(笑)
その声を聞きながら第1会議室を抜け出して第2会議室に逃げてきたアキトとユリカ。
第2会議室はゲキガンガーグッズの即販会が催されていたが、クルーが上映会に出払っているので現在は誰もいない。
アキト「しかし、信じられねぇ。
ついこの前まではゲキガンガーって言ってたらバカにされてたのに・・・」
ユリカ「ん?ゲキガンガーが認知されて嬉しくないの?
それともゲキガンガーが嫌いになったの?」
少しウンザリ気味のアキトの顔をユリカは覗き込んで尋ねた。
その問いにアキトは苦笑して答える。
アキト「そうじゃない。ガイが生きてたら喜ぶだろうなぁ〜と思うけど、
俺自身は複雑っていうか・・・」
ユリカ「複雑って?」
アキト「ん・・・どう言ったら良いのかな・・・」
アキトは自分の心情をすくい取るように答える。
アキト「そりゃ謎解きとか確かにおもしろいのはわかるけどね。
けど、『楽しいことだけ数珠のように紡いで生きていけるわけない』って台詞に結構グサリときたりしたんだけど、誰もその台詞を評価してないんだよなぁ・・・
つまりそういうこと。
謎解き以外にもおもしろい所や大事な所はいっぱいあったのにそれ以外の所だけ評価されて・・・」
ユリカ「まぁ確かにそうだよね・・・
ってゲキガンガーに謎解きなんてあった!?」
アキト「あれ?無かったっけ?」
アキト君、なんか作品間違えてます(笑)
アキト「ほら、あるじゃん。俺だけが知っていたゲキガンガーの良さってやつ。
ゲキガンガーそのものが認められるのは良いんだけど、俺だけが知っていた良さっていうのは案外みんな認めてなくて、それ以外の些末なディテールだけがクローズアップされて騒がれてるんだ・・・」
ユリカ「確かにわかる気がする。
最近ルリちゃんやメグミさんがアキトにアタックしてるのって、アキトが評価されているってことだよね。
でも、それってアキトがエステに乗れたり、武術が出来るようになったからって気もするし・・・」
アキト「本当にそうかぁ?」
ユリカ「本人達に言わせれば違うかもしれないけどね。
でも本当に小さい頃からのアキトを知っている私にすれば、たとえアキトがダメダメでも・・・」
アキト「ダメダメって・・・(汗)」
ユリカ「つまり、私はアキトの素敵なところはいっぱい知ってるし、そういう自分だけが知っているアキトの良いところを他の人も認めてくれるっていうのは嬉しい反面、嫉妬もあるよ」
アキト「・・・・」
ユリカ「なによ、アキト。ジロジロ見つめて!」
改めて今まで違った何かを見るようにユリカを見るアキト
アキト「・・・案外まともなこと考えてるじゃん」
ユリカ「酷い!アキトって私のことどういう風に見てたの!?」
アキト「お気楽艦長」
ユリカ「酷い!!!」
ポカポカアキトの頭を殴るユリカ(笑)
と、そこに・・・
アキト「ちょ、ちょっと待て、ユリカ!」
ユリカ「何よ!誤魔化そうったって・・・」
アキト「そうじゃない!誰か入ってくる!!!」
ユリカ「ええ!?」
二人はドアが開く音がして咄嗟に隠れてしまった。
なぜ隠れたのかはお約束というやつである(笑)
ミナト「お邪魔しま〜す」
九十九「ちょっと待って・・・」
ミナト「ほら、思った通り誰もいない♪」
九十九「ミナトさん〜〜」
入ってきたのはミナトと九十九である。
慌てて机の下に隠れたアキトらはギョッとした。
ミナト「私って文化祭とかそういうやつを抜け出すの、結構得意だったんだ♪」
九十九「ですが、勝手に抜け出すのは・・・」
ミナト「良いよ、良いよ♪
久しぶりに逢えたのに二人きりになれなかったし。
それとも私と二人きりになるの、嫌だった?」
九十九「そんなことありません!」
ミナト「なら、二人の時間を楽しみましょうよ♪」
なんか、既にミナト達は二人の空間を作りつつある。
そんな中、居心地が悪いのは机の下の二人だ。
アキト『どうするんだよ〜〜
最初から隠れてなきゃ、堂々と出ていけたんじゃないか!』
ユリカ『だって〜』
ここは興味津々、嫌がっている割には耳をそばだてる二人である(苦笑)
ミナト「ねぇ、白鳥さん。私のこと心配だった?」
九十九「ええ」
ミナト「ユキナちゃんより?」
九十九「え?いや、それはその・・・」
ミナト「ウソ♪
比べる方がおかしいわよね」
九十九「ええ。どっちも大事ですよ」
ミナト「にしても・・・」
茶目っ気を出して笑ったかと思えば、少し陰りのある表情になるミナト。
九十九「にしても・・・なんですか?」
ミナト「心ここに在らずって感じがするんだけど・・・」
九十九「え!?」
見透かされたのだろうか?
それとも女のカンという奴なのだろうか?
ミナトは九十九の微妙な表情の陰りを感じ取って指摘した。
九十九は必死に誤魔化そうとする。
ミナト「やっぱり浮気?」
九十九「な、何を!?」
ミナト「やっぱり故郷の女性の方が良くなっちゃった?
あれからずいぶん向こうに戻っていたし、向こうで素敵な出会いがあっても・・・」
九十九「そ、そんなことは・・・」
ミナト「微妙にどもってるし・・・」
心当たりがないとは言えない九十九
『しかし、あれは浮気というよりは・・・』
と、心の中で言い訳やら弁解やらすると余計に表情に出る九十九である。
ミナト「いいんだよ。やっぱり気持ちが離れちゃったらどうしようもないし、
それに私は地球人だし・・・」
九十九「ミナトさん、別に自分は浮気とかは・・・」
ミナト「ならさっきからどうして抱きしめてくれないの?」
九十九「そ、それは・・・」
ミナト「ナデシコに着いたときだって妙に余所余所しかったし・・・」
やはり気づかれていた。
九十九は焦る。
確かに何となく躊躇って事は否定できない。
無意識だけど、積極的にはミナトに接触しようとはしていない。
ミナト「純情というか、免疫がないというか、奥手なのか真面目なのか、そういうのかとも思っていたけど、そうじゃないみたいだし・・・」
九十九「い、いや・・・そういうつもりは・・・」
ミナト「なら抱きしめて!」
九十九「う・・・」
九十九は絶句する。
確かに抱きしめないのは恥ずかしいからでもある。
決して浮気して疚しいからではない。
けど・・・
九十九「自分は・・・」
ミナト「白鳥さんのことは信用しているわよ。
何を悩んでいるかわからないけど、私は何でも話して欲しいし、あなたが悩んでいるなら支えたいとも思っているわ。
それでも私を抱きしめてくれないの?」
九十九「ミナトさん・・・」
九十九は迷っていた。
ミナトへの愛は変わっていない。
けれど彼女の顔を見る度に思い出すのだ。
別の女性の言葉を。
『あなたは親友の月臣元一朗に殺される』
『ハルカ・ミナトは別の男性と結婚する。その時あなたは墓の下にいるから』
もしアキの言葉を信じるなら自分はこれからまもなく死ぬ人間だ。
おそらく和平会談辺りに殺されるのであろう。
彼女の警告や、わざわざこの時期に自分に接触したことを考えるとこの推測は多分正しいはずだ。
和平会談を決裂させるために自分は利用されて殺される。
・・・ならば、自分は今、ハルカ・ミナトを抱きしめてしまって良いのか?
死に行く人間が心を残していって良いのか?
彼女の心を死人に縛り付けてしまって良いのか?
この場の勢いで、
自分勝手な愛情のために
ただ自分が抱きしめたいという理由だけで将来の彼女へ責任を負えぬ身の自分が抱きしめてしまって良いのか?
さっきから何度も握っている。
ポケットの中のエンゲージリングを。
渡すべきか、渡さないべきか、
未だに決心が付かないのだ。
ミナト「そんなに和平会談のことが心配?」
九十九「・・・」
ミナト「大丈夫、上手く行くわ。
私は白鳥さんを信じているから♪」
九十九「ミナトさん・・・」
九十九はハッとした。
彼女は自分を信じている。
自分が和平会談を成功させることを。
なのに自分は既に失敗して自分が殺されることばかり考えている。
なんて愚かだったんだ!!!
九十九「ミナトさん!」
ミナト「きゃ!」
九十九は力の限り抱きしめた。
ミナト「白鳥さん・・・痛い」
九十九「あ、す、済みません!!!」
ミナト「ううん。私が好きっていっぱい伝わったから許す。
ところで・・・それから先はしてくれないの?」
九十九「その先とは?」
ミナト「キ・ス・♪」
九十九「ええ!?」
さすが純情青年(笑)
赤くなってどぎまぎしている九十九に母性本能をくすぐられるミナト。
ミナト「じゃぁ、お姉さんが優しく教えてあげる。
左手を私の腰にかけて、右手は私の頬を撫でて。
それで・・・」
九十九「それで・・・」
アキト『・・・』
ユリカ『・・・』
アキトとユリカは二人の影が重なるのを固唾を呑んで見守った。
しばし後・・・
ミナト「どう?これが大人のキスよ」
九十九「・・・ミナトさん!!!」
ミナト「うわぁ」
今度は九十九の方から抱きしめてキスをした。
精一杯の愛情を込めて
絶対に生きて帰ってくるために!
必ず和平を成功させて愛する人と共に生活できる世界を作るために!
彼の迷いも消えたとミナトも感じることが出来たから、九十九の胸に安心して身を預けた・・・。
アキト『・・・行こう』
ユリカ『そうだね・・・』
二人の姿を見届けて安心したのか、ただのお邪魔虫なのを自覚したのか、アキト達はさっさと会議室を匍匐前進して去ることにした(笑)
廊下に出てきたアキトとユリカは未だ興奮が冷めやらぬみたいだ。
アキト「和平・・・成功させような・・・」
ユリカ「そうだね・・・」
二人は何とはなしに誓うのであった。
でも・・・
ユリカ「・・・」
アキト「ん?どうしたんだ、ユリ・・・」
と振り返ったアキトは驚いた。
なぜならそこには腕をお願いポーズに組み、目を瞑って唇を突き出しているユリカの姿があった。
アキト「お、お前、何やってるんだよ!」
ユリカ「大丈夫、上手く行くわ。
私はアキトを信じているから」
アキト「お、お前、何をミナトさんと同じ台詞を・・・」
何をお願いしているか一目瞭然だった(笑)
アキト「そ、そういうのはだなぁ・・・愛する者同士がするものであって・・・」
ユリカ「アキトは私のこと、愛してないの?」
アキト「べ、別にそんな・・・」
ユリカ「じゃ、嫌い?」
アキト「好きとか嫌いとか2択みたいなもんじゃなくてだな・・・」
迫るユリカに真っ赤になってたじろぐアキト。
けれどユリカは真顔になる。
ユリカ「わかってる。アキトはアキさんのことが心配なんだって。
だから私達にも遠慮しているって」
アキト「えぇ!?
そ、そんなことは・・・」
ユリカ「今、アキさんがいればいいなぁと思ってるでしょ?」
アキト「そりゃ・・・そうだけど」
ユリカ「私、代わりでも良いから!」
アキト「えぇ!?」
ユリカ「必ずアキさんより魅力的な女の子になってみせる!
だから・・・」
アキト「ちょっと待てよ!」
なんか、思ってもいない方向に話が進むのを止めようとするアキト(笑)
アキト「そりゃ、アキさんのこと、信頼もしてるし尊敬もしてるけど、
それは恋愛的に好きとかどうとかじゃなくて・・・
第一、彼女はアレだぞ?」
真実を知った今、とても彼女を恋愛対象に捉えることは出来ない。
そのはずだ。
多分・・・
きっと・・・
まぁ頭の中ですぐに切り替えが出来るわけないわなぁ(笑)
その自信の無さを捉えたのか、さらに積極的な行動に出るユリカ(笑)
ユリカ「んーーー」
アキト「い、いやぁ・・・」
ユリカ「んんーーー」
アキト「ごく・・・」
さっきの熱気に当てられたのもあって、何となくその気になるアキト。
まぁ、『アキさんは未来の自分だぞ!』という言い訳する気持ちが後押ししたのかもしれない。
静かに顔をユリカに近づけるアキトであったが・・・
???「まじまじ・・・」
???「下世話ですから止めましょうよ・・・」
???「そういうルリ姉だって固唾を呑んで見てるし」
アキト&ユリカ「うえぇぇぇぇ!!!」
なにやら腰より下の方から話し声が聞こえると思って振り返るとちょうどそこにいたおチビちゃん三人組と視線がバッチリ合ってしまった(笑)
ユキナ「ユキナで〜す♪」
ルリ「・・・どうもです」
ラピス「ういっす」
アキト「ユキナちゃんにルリちゃん、それにラピスちゃん・・・ど、どうしてここに!?」
ユキナ「お兄ちゃんを捜しに来たの。」
ルリ「ユリカさん・・・抜け駆けしましたね?」
ユリカ「な、なんの事かな〜〜(汗)」
ラピス「動揺してる」
ユリカ「ど、動揺なんかしてないよ。あはははは・・・」
まずいところを見られ、しかもお子さん三人組だから始末が悪い。
ユキナ「いいから続けて」
アキト「続けてって言われても・・・」
ルリ「艦長、不潔です」
ユリカ「いやぁ〜〜不潔って言われても・・・」
ラピス「服務規程第123条3項、艦長は服務中に手と手の接触以上の男女の関係を持ってはいけないと・・・」
ユリカ「そんな規定はありません〜〜」
ユキナ「不潔ぅ〜」
ルリ「不潔です!」
ラピス「不潔、不潔」
アキト「だから〜〜」
ユリカ「そうじゃないんだってばぁ〜〜」
しばらく言われ続ける二人であった(笑)
まるでパーティーのようだった。
誰もが浮かれ、はしゃいだ
もうすぐ和平は成る。平和は来るんだ。
そう確信していた。
地球も木連も同じものを、ゲキガンガーを好きと思っている。
同じ気持ちがあるなら分かり合える、そう信じていた。
ナデシコのクルー達はゲキガンガーの上映を見てそう思っていた。
けれど、何事も終わりは来る。
ゲキガンガーの話数が39話で終わるように
パーティーにも終わりは来る。
みんなそれを少し名残惜しくも感じていた。
誰もいなくなった上映会場に九十九とアキトだけがいた。
ちょうど次が最終話の上映である。
その前の小休止
みんな、ぶっ続けで見続けた反動からか、食事を取る者、煙草を吸いに行く者、やり残した仕事をしに行く者、それぞれであった。
そんな中で二人だけが余韻に浸るためにその場に残っていた。
アキト「長かったような、あっという間のような・・・」
九十九「さすがの私達でも全話ぶち抜きなんて無謀なことはしないけどね(苦笑)」
アキト「違いますよ。
和平のことです」
九十九「ああ、そっちの方か(笑)」
そう、長かったような、あっという間のような
けれどもう間もなく結果は出る。
九十九はふとこの少年と話してみたくなった。
九十九「君はゲキガンガーが好きかい?」
アキト「ええ・・・何でですか?」
九十九「いや、何となく乗り気じゃないみたいだったから」
アキト「ん・・・なんかこういう風に騒ぐのは違う気がするから」
九十九「違う?」
アキト「ええ。確かにゲキガンガーは子供の頃、すごく好きで・・・
でもナデシコに乗るまで忘れてたんですよ。一人で生きていくのに精一杯で。
ナデシコに乗ってからです。また好きになり出したのは。
というか、ゲキガンガー好きの奴と同室になって。
そいつ、ヤマダ・ジロウって名前があるのに自分のことダイゴウジ・ガイって名乗っている変な奴だったんですけど、それが白鳥さんにすごく似ていて・・・
あ、済みません」
九十九「いや、別に気にしてないけど。
ふぅ〜ん。僕に似た人がいたのか。
それでみんな僕のことをそのヤマダ君って呼んでいたのか・・・
さぞかし好青年だったんだろうねぇ」
アキト「い、いや・・・まぁ好青年といえばそうでしたけど・・・」
さすがに「無駄に暑苦しい」とは付け加えられないアキトであった。
ともかく、話を続ける事にする。
アキト「あいつは純粋にゲキガンガーが好きでした。
ただ作品が好きな奴でした。
それでゲキガンガーみたいなヒーローになりたがっている奴でした。
けど、結局火星で死んじゃって・・・」
九十九「それは・・・」
アキト「俺もゲキガンガーが好きでした。
みんなを守れるヒーローになりたかった。
だから人に教えを請うて武術も身につけました。
でも結局、ヒーローにはなれなかった・・・」
九十九「そんなことはないだろう。君は地球のエースパイロットだ」
アキト「俺はあの人の後ろに引っ付いてゴソゴソしてただけで、何もしてません。
もしヒーローがいるとしたらあの人のことだと思います。
ああ、あの人っていうのは俺に武術を教えてくれた人ですけど・・・
けど・・・・
あの人ぐらい何でも出来ても結局個人は無力なんだって悩んでました・・・」
九十九「そうか・・・
そうだな・・・」
アキト「今回の脱走騒ぎでよくわかりました。
一人じゃ何もできない。
みんながいなきゃ何もできなかった。
けど、それだって本当に明日が正しい道に進むかどうかすらわからない。」
アキトは思う。
本当にあの人の体験した未来はこれで変わるのだろうか?
これからの未来は本当に悲劇を免れるのだろうか?
心の奥にわずかだがわだかまりが存在する。
それが何かわからないが、胸騒ぎのようなそんな感覚なのだ。
九十九「それでかい?君が乗り気じゃなかったのは」
アキト「い、いや・・・それは・・・
なんというか、ただゲキガンガーはゲキガンガーで楽しむものであって、それから先に利用されるのが何となく違うなって気がしただけで・・・」
九十九「耳が痛いな」
アキト「え?」
九十九「確かに我々木連はゲキガンガーを理想として・・・いや心の拠り所にしてきた。反面、それ以外の価値観を受け付けなくなりつつある。
全ての判断をゲキガンガーが教えているからと考えることを放棄しつつあるのかもしれない・・・」
アキト「いや、俺はそこまで・・・」
九十九「事実だ。気にすることはない。
それより・・・」
九十九は天を仰ぐ。
そして静かにアキトに尋ねる。
九十九「悪は滅ぶべき・・・
絶対的な悪はやはりあり、滅ぶべき存在に違いない。
けれど悪とは一体何なんだろうなぁ・・・
我々は何を悪と呼ぶべきなのだろうなぁ・・・」
アキト「白鳥さん・・・」
九十九「我々を弾圧し続けてきた地球を悪だと思い続けてきた。
けれどそこには、当たり前だが良い奴も悪い奴もいた。
白と黒に奇麗に分かれているかと思った世界は実はまだら模様だった。
けれど僕らはそれをまた白と黒に塗り分けようとしているだけなのかもしれない・・・」
アキト「そんな・・・」
九十九「でも僕は思う。
どんなに白くても、それは容易に黒に変わる。
その逆もしかりだ。
それはたとえ灰色でも闇では白く見えるのと同じなのかもしれない。
だからこそ・・・」
アキト「だからこそ?」
九十九「環境が、世界が正しくなければいけないのかもしれない。
不幸な世界ではやはり不幸な考え方しか起きない。
一人一人はたとえ良い人達でも全体を指し示す方向が間違っていれば、レミングスの行進となり、やがては破滅するまで走り続けることになる。
だからこそ、それは一部の政治家だけじゃなく、世界そのものを作り出す民衆一人一人の意識までも改めなければいけないのかもしれない・・・」
九十九は呟くように言う。
しかし、アキトはついて行けていないようであった(笑)
アキト「えっと・・・済みません、難しすぎます(汗)」
九十九「つまりだ。
君が分け隔てなくユキナを救ってくれたように、みんな一人一人がそう思わなきゃいけないんじゃないか?ってことさ。」
アキト「それならわかります(笑)
けど・・・それって大変じゃないんですか?」
九十九「そうだな(苦笑)」
政治は人の意識を変える手助けは出来ても、変わるのは民衆自身だ。
今までの価値観、偏見、恨み、妬み、それらがすぐに払拭できるほど生やさしいものではない。
心の中に深く深く根付いたものだ。
アイデンティティーと言っても良いものだ。
そこから変えなければ、和平は仮初めに終わるだろう。
そこに特効薬はない。
ただ外敵や共通の目的を作ることによって一時的に束ねることは出来るが、まやかしはいつまでも通用しない。
ゲキガンガーだって一時的な効果しかないだろう。
だからこそ、少しずつでも人々の意識を変えていかなければいけないのだ。
アキト「じゃ、和平が成っただけで終わりじゃ・・・」
九十九「そうだな。終わりじゃないな」
アキト「・・・そうですね。終わりじゃないですね」
アキトは思った。
そうか、何か悪を倒しただけじゃ、何も変わらないんだ。
自分達の心の中にある偏見や憎しみをどうにかしないといけないんだ。
そうじゃなければたとえここで和平を成しても結局は火星の後継者とかいう連中は生まれてくる・・・
アキト「わかりました、白鳥さん!
俺もどこまで出来るかわからないッスけど、
その一人一人を変えるって奴をやります!」
九十九「テンカワ君・・・」
アキト「だから和平、成功させましょう!」
九十九「・・・そうだな」
九十九は感じた。
この道は正しいのだと。
たとえ自分が道半ばにして力尽きたとしても、後に続いてくれるものがいるのだと。
この和平会談で自分が死んでも大丈夫だと・・・
九十九「ダメだな、すぐに弱気になる(苦笑)」
アキト「どうしたんですか?」
九十九「何でもない」
九十九はこの日、心の底から本当に笑った。
ルリ「木連の艦隊が近づいてきます」
ユリカ「正面スクリーンに映して」
そこには数隻の戦艦が映っていた。ゆめみづき級の戦艦である。
メインスクリーンに早速木連側から通信が入った。
草壁『木連中将、草壁春樹です』
ユリカ「ナデシコ艦長、ミスマル・ユリカです」
草壁『早速ですが、和平調印に関して色々打ち合わせしたい事項があります。
よろしいでしょうか?』
ユリカ「はい、喜んで」
誰もが和平の期待に胸を躍らせた。
メグミ「なんか、こう上手くいくと嘘みたいですね」
ルリ「・・・本当に」
メグミ「ルリちゃん、どうしたの?」
ルリ「いえ、計算通りに行き過ぎるなぁ・・・って」
メグミ「いいんじゃない?計算通りで」
ルリ「いえ、気のせいだと良いんですが・・・」
ミナト「大丈夫よ。白鳥さんが間に立ってくれるんだもの
きっと上手くいくわよ♪」
メグミ「そうですよね♪」
ルリ「・・・」
それがナデシコクルーの大方の気持ちであった。
それを疑うものは誰もいなかった・・・
対する和平の相手はというと・・・
東郷「パチパチパチ
なかなか閣下も役者ですねぇ」
草壁「このくらい、造作もない」
東郷「ところで北辰さん、さっき報告のあった密航者の件は?」
北辰「現在探索中だ。程なく見つかるだろう」
東郷「急いで下さいね。もうすぐ和平会談ですから♪」
東郷は面白そうに笑う。
草壁「それはそうと、引き金を引くのは結局は誰なのだ?」
東郷「もちろん、彼ですよ」
草壁「だが、彼は・・・」
東郷「お忘れですか?僕の特技♪」
草壁「ああ、そうですね・・・」
途端に従順になる草壁春樹を見て東郷はほくそ笑む。
北辰「東郷・・・」
東郷「何ですか、北辰さん」
北辰「貴様、本当に約束を違えるつもりはないのだろうな?」
東郷「ええ、新たなる秩序・・・
草壁春樹に実現してもらいますよ。
そのように『時の記述』にも書いてありますからね」
北辰「ならいい。」
東郷「それよりも・・・」
北辰「なんだ?」
東郷「君の思い人、この艦に乗っているかも♪」
北辰「我が生涯の伴侶か?」
東郷「和平会談、邪魔させないで下さいね」
北辰「わかった・・・」
そういうと北辰は静かに部屋を辞去した。
「北辰、東郷・・・
お前達の好きなようにはさせない・・・」
アキはきさらぎの倉庫に身を隠していた。
あれから月臣を見かけないのは気になっていたが、それよりも今は九十九暗殺阻止に全神経を注いでいた。
「白鳥君、死んじゃダメ。
あなたは地球と木連の架け橋になる人なの。
あなたがいなければ・・・」
未来を知る人間でも、次の瞬間、何が起こるかわからない。
彼女もまた、歴史の中で足掻く者であった・・・
彼らは格納庫で九十九を待っていた。
アキト「白鳥さん、遅いなぁ〜」
ゴート「まったくだ!たかが用を足すのに何分かけるつもりだ!」
ミナト「ゴートってば、下品〜」
ゴート「何だと!そういうお前こそ、なぜ和平会談に付いて来るというのだ!」
ミナト「良いじゃないの、別に」
ゴート「遊びに行く訳じゃないんだぞ!」
ユリカ「まぁまぁ(汗)」
元恋人同士がケンカになりそうな、ちょうどその時・・・
九十九「済みません、遅くなりました〜♪」
アキト「白鳥さん、遅い!」
九十九「悪い悪い。ちょっと緊張しちゃって(汗)」
ゴート「さっさと行くぞ!」
時間も押しているので急かすゴート。
それぞれが自分の乗機に乗り込もうとしたとき・・・
九十九「済みません、私もあなた方のシャトルに乗せてもらってかまいませんか?」
ユリカ「え?」
ゴート「やってくる時に乗ってきたゲキガンタイプに乗るんじゃなかったのか?」
九十九「いやぁ、腹の調子が悪くて、運転に集中できないんだ。
乗せてくれると助かる」
ゴート「・・・わかった」
ここで時間を潰しても仕方がないと思ったのか、ゴートは渋々承知した。
これで喜んだのがミナトである。
ミナト「じゃ、一緒に乗って行きましょうね♪」
ゴート「こら!遊びに行くんじゃないんだぞ!」
ミナト「何よ!良いでしょ〜〜ねぇ九十九さん?」
九十九「いや、ミナトさんは残って下さい」
てっきり賛同してくれるのかと思ったミナトは残れと言った九十九に驚いた。
ミナト「でも・・・」
九十九「私のような未熟者が心配なのはわかりますが」
ミナト「いえ、心配はしてませんけど・・・」
九十九「では、私を信じて下さい」
九十九はミナトの頬にキスをするとウインクをしてひなぎくへ向かった。
ゴートもユリカもその後に続く。
アキト達も自らのエステに乗り込んだ。
ただ一人取り残されたミナトが呆然と呟いた。
「・・・あの人、誰?」
だが、その呟きを聞いたものは誰もいなかった・・・
誰もいなくなったブリッジで東郷は愉快そうに笑う。
東郷「役者が揃ったか・・・
さて、パーティーを始めよう」
東郷は高らかに宣言した。
多くの人々の努力をあざ笑うかのように・・・
こうして問題の和平会談は始まった。
全ての人達が集まるその場で悲劇は静かに始まった・・・
ってことで中編に続きます
取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。
アキ「私の出番、ほとんどなしだねぇ〜(シミジミ)」
−良いじゃないですか、前回あれだけ活躍したんだから
アキ「アレは活躍というのか?」
−活躍でしょう
アキ「まぁ、それは良いけど。
すごいシリアスねぇ。白鳥君もヒタヒタと死亡宣告されているみたいな気がするけど・・・」
−まぁサブタイトルがアレですし(苦笑)
アキ「・・・でもさぁ、何で今回は私の知らないうちに話の種にされているかなぁ〜」
−良いじゃないですか。色々惚れられてるんだから
アキ「良いわけないだろう!!!(木連式柔炸裂!!)」
−・・・・・・というわけで中編をどうぞ。
ちなみに中編の内容とは微妙に違うので予めご了承下さい(笑)
Special Thanks!!
・カバのウィリアム 様
・k-siki 様
・アキラ 様
・YSKRB 様
・kakikaki様
←BACK | TOPへ戻る | NEXT→ |
SS navigationbar(version1.1) by 大塚りゅういちの隠れ家 |