黄昏は訪れる
夜の帳が辺りを包む
人々は真実を見失い、戸惑い、そして迷う
だけど今は信じよう
それが何であるか、今は見えないけれど
この道が正しいのかわからないけれど
この道の先に道はなく、この道の後に道はない
ただ歩いた軌跡が道になるのだから
ああ、これってSecond Revengeのラストとほんのちょっぴり関係があったりしますのでそのつもりで〜
ルリ「現在ナデシコはYユニットの接合により調子が悪化、整備調整が必要になりました。
仕方がないので使えなくなった月ネルガルドックを離れ、近くに来ているコスモスに修理を依頼することになったのですが・・・」
ルリは独り言をいいながらちらりと後ろを見る。
すると・・・
エリナ「見なさい!あなたが見境なくYユニット付けたりするからこんな事に!!!」
プロス「ここへ来て修理代ですか・・・痛い出費ですなぁ」
ユリカ「だって〜〜」
騒がしい大人を一別するとルリは・・・
ルリ「気を付けろ、無理な合体怪我の元・・・なんて標語はどうでしょうか?」
ミナト「どうでしょうか・・・って言われても(汗)」
平穏無事に戻ったかのようなナデシコではあったが、そうでもなかったようだ(笑)
さてさて、ここ訓練施設の道場ではアキとアキトが空手着に着替えて向かい合っていた。
もちろんアキトは真新しい真っ白な空手着で白帯であるが、アキは真っ黒な空手着で黒帯であった。
アキ「これより戦闘訓練に入ります」
アキト「はい!よろしくお願いします!」
元気良く期待に胸を膨らませて挨拶するアキト
これから最強と呼ばれる彼女から直々に戦闘の訓練を受けられるのだ!
だが、現実は期待を大きく裏切るもので・・・
『ラジオ体操第一、よ〜い』
アキ「いちにぃさんしぃ」
アキト「ご〜ろくしちはち」
アキ「声が弛んでる!もっと元気良く!!!
いちにぃさんしぃ」
アキト「ご!ろく!しち!はち!!!」
とか・・・
アキ「ストレッチ、いちにいさんしぃ」
アキト「ご〜ろくしちはち」
アキ「やる気あるのか!いちにぃさんしぃ」
アキト「ご!ろく!しち!はち!!!」
とか・・・
アキ「柔軟、屈伸!」
アキト「ううう・・・」
アキ「やっぱり体が固いねぇ、アキト君。
んじゃ押して進ぜよう。
そら♪」
アキト「イタタタ!!!ギブギブ!!!」
・・・・と、基本的な運動ばかり
アキト「アキさん〜〜」
それだけで既にへこたれつつあった。
アキ「どうした。強くなりたいっていうのはウソだったの?」
アキト「大丈夫です!やります!!!」
現金なものでその言葉で再びやる気を取り戻すアキト。
だが・・・
アキ「ほら、ダッシュ30本!!!
休むな休むな!」
アキト「うおりゃぁぁぁぁぁ!!!」
アキ「ほら、腕立て背筋50本」
アキト「ふんふんふん!!!」
アキ「股割り!」
アキト「うにょにょにょにょ〜〜」
アキ「懸垂30回!」
アキト「は、はひぃ〜〜」
・・・・あっと言う間に挫折した(笑)
アキト「あ、アキさん・・・」
アキ「どうした。もうへこたれたか?」
アキト「いや、そういう訳じゃないッスすけど・・・
これって・・・戦闘訓練じゃなくって、基礎体力作りですよね?」
アキ「そうだよ(あっさり)」
アキト「アキさん!」
アキ「なに?もう辞めたいの?」
アキト「違います!でも俺が教えて欲しいのは戦闘訓練で体力を付けたい訳じゃ・・・」
アキ「つまり辞めたいと?」
アキト「そうじゃなくってですねぇ・・・」
アキ「あんたねぇ、あんたのぷよぷよの体で私と同じ訓練させたら死ぬか体を壊すかのどちらかでしょうが。基礎体力が付いていない者にどんな訓練付けても無駄よ」
アキト「いや、それはその・・・」
アキ「っていうか、今までのを全部で20分以内に終わらせられるようになってからでかい口叩きなさい。
第一今のだって毎日の準備運動よ?
それに1時間以上もかけてへこたれているような人がこれから何をしようと思っているの?」
アキト「・・・・・・・・・・面目ないッス」
とまぁ、こんな感じでまずは強くなる以前の所から鍛えられているアキトであった(笑)
『以上だ』
「ちょっと待ちなさいよ!!!」
一方的に通信を切られてしまったムネタケ。
通信を送ってきたのは軍の高官。
内容はというと、先の月面での戦闘時に木星蜥蜴が実は100年前に月を追放された地球人ということをナデシコのクルーはおろか、月の居住者にも知られてしまったことの叱責である。
何が悪かったのか・・・
もちろん上層部がそんなことの真剣な検討をするはずもない。
真実を知っていてそれを話したアカツキらはその影響力で手出しもできず、バラしたナデシコクルー達に対する直接の信賞必罰権限もない。
ましてや、ルリが秘匿回線のハッキングをした痕跡など残すはずもない。
そうやって追究していくと責任を問える者が誰もいなくなるのだが、最終的には機密漏洩のきっかけを作ってしまったという一点にて詰め腹を切らせる相手を定めたようだ。
それがムネタケへの先ほどの通信だ。
極東軍本部に出頭後、南オセアニア本部副司令官への任官・・・
見た目上は栄転である。
が、南オセアニア本部は南極を含むニュージーランドやオーストラリアなどの大陸以外はほとんどはだだっ広い海に囲まれた地域であり、チューリップつぶし以外はほとんど湾岸警備しかない、中央から見れば閑職も閑職である。
別名『窓際本部』とか『空き地本部』とか言われている。
結局、ナデシコの提督を解任させられ左遷され、もう出世の見込みなし。
早く辞めろ、辞めなければ死ぬまで飼い殺しだぞ・・・
そう言われたも同然だった。
「冗談じゃないわよ!
今まで何のために他人を押しのけてまで出世したと思っているの!
それをあんなクルー達の為に詰め腹を切らされるなんて・・・
そんなのまっぴら御免よ!」
ムネタケは激昂に震える。
悪いのは自分だなんて当然考えない。
悪いのは常に他人
出世できないのは他人が足を引っ張るから
他人は自分がのし上がる為の踏み台だ。
ならこの仕打ちは誰のせいだ?
誰の・・・
心の底で誰かが囁く
『あの女のせいだ・・・』
あの女のせい?
『そうだ。あの時、ナデシコを徴発できていればこんな事にはなっていなかった』
そうだ、確かナデシコが竣工したとき
ネルガル所有の戦艦にオブザーバーとして乗り込んだが、その実はナデシコを連合軍に帰属させることだった。
目の当たりにしたその性能をそのまま連合軍に編入させていればムネタケの権力は強化されていただろう。だからこそ、オブザーバーなんて職を引き受けたのだ。
だが、失敗した。
あの女のせいで失敗した。
アマガワ・アキのせいだ。
あの女一人に連合軍の兵士全員がやられてしまった。
あれがケチのつけ始めだった。
軍内部では無能呼ばわりされた。
強硬策を採ったのがまずかったとか、現場を知りもしないくせにさんざん批判された。
7ヶ月後に無事が確認されたナデシコの提督になるよう命令された。
引き受けた。引き受けざるを得なかった。
意地もある。雪辱もしたかった。
だが、周りは既にネルガルとの複雑な関係を、ナデシコ自身の破天荒ぶりを敬遠していた。こんなところでとばっちりを食いたくない、それが軍内部の支配的な空気だった。
だけどその戦闘能力は認めざるを得ない。
でもスチャラカな連中の任務失敗に付き合わされるのもゴメンだ。
だからお鉢がムネタケにまわってきたのだ。
半ば強制的だ。
それからのナデシコは目を覆わんばかりの惨憺たるものだ。
任務の遂行そのものはするものの、羽目を外して被害を減らしているのか増やしているのかわからない有様。
そうなるとろくな仕事がまわってこず、実力をアピールする機会すらない。
極めつけはこの前の連合軍攻撃騒ぎである。
さすがに進退窮まりかけたが、ネルガル側からナデシコ譲渡の打診があり、事なきを得た。
なのに・・・
なのに・・・
今回の件でそれもパーだ。
ネルガルはナデシコ譲渡を引っ込め、木星蜥蜴の正体がバレた事実だけが残ってしまった。進退ここに極まったりである。
『それもこれも全てあの女のせいだ・・・』
「そ、そうよ・・・あの女のせいよ・・・」
『あの女の正体を暴け、鉄槌を下せ』
「そうよ、あの女を倒してこの危機を脱してやる!」
ムネタケは闇の声に促されるかのようにありもしない被害妄想に心を奪われていくのであった・・・
あれから必死に熱血根性を発揮して頑張るも、あっという間にへばってしまった。
アキト「アキさ〜ん」
アキ「なによ、相変わらずへこたれるのが早いわねぇ」
アキト「というか、何でさっきから肉体のトレーニングばかりなんですか?」
人はそれを言い訳と言うが、アキトはアキトなりに疑問に思っていたことだ。
アキ「っていうか、あんたが強くなりたいって言ったんでしょ?」
アキト「そうじゃなくって、操縦するのはエステでしょ?
体を鍛えるんじゃなくってエステの戦闘技術とかそういうのなんじゃないかなぁと・・・」
アキ「あんたねぇ、前にも言ったでしょ?体力が必要だって・・・」
アキト「いや、それはわかっているんッスけど・・・
ほ、ほらエステってIFSで動かすじゃないですか。
体力とかよりも戦闘技術の方が大事じゃないかなぁ・・・と」
アキ「まったく・・・」
アキは溜息をつく。
アキトは何にもわかっていないのだ。
エステで強いということがどういうことか。
アキがなぜあれほど強いのか
アキ「あんた、IFSを偶然付けててたまたまエステで活躍したから気づいていないでしょうけどねぇ、もしかしてエステって誰にでも乗れるお手軽な兵器って考えていない?」
アキト「・・・違うんですか?」
アキ「バカねぇ。エステは通称『もっとも難しい兵器』って呼ばれているのよ」
アキト「え?でも・・・」
アキトが驚くのも無理はない。
確かに手こずりはしたが、所詮コックあがりの自分が何とか戦って来れたのだ。
それが難しい兵器ではあり得ない。
だけどアキはこう言う。
アキ「それはエステバリスの基本性能の高さとIFSというサポートシステムが難しさを空気のように吸収してくれているだけでその本質はありとあらゆる兵器や戦闘要素が詰まった化け物兵器なのよ」
アキト「それは一体・・・」
アキ「格闘戦、ナイフ戦、近距離射撃戦、長距離狙撃、陸戦、機雷散布、大気圏による航空戦闘、無重力戦闘、対人戦闘、強襲戦エトセトラ・・・
その全ての要素を実現できるように設計されている。
それがエステバリスよ。
あなたはまだ機械の補助でその端っこをかじっているだけよ」
アキト「う・・・・」
確かに、エステバリスはそれらの戦闘の全てをこなせる。
アキトはまだ格闘戦や近距離射撃戦などをちまちまやっているにすぎない。
アキト「でも今まで結構やれてたッスよ。それもIFSのお陰だって言うんですか?」
アキ「そうよ。
エステバリスを上手に扱える者は2パターンに分類できる。
一つはアカツキ君やリョーコちゃんの様に元々機動兵器や格闘技に精通しているタイプ。
そしてもう一つはアキト君やヒカルちゃんのようにゲキガンガーなどの戦闘アニメに精通しているタイプ」
アキト「え?それってゲキガンガー好きだからですか?」
アキ「そう。その秘密を知るには何故エステバリスは人型なのか、IFSの本質は何なのかを知らなければいけない。
それは・・・」
アキが続きを説明し出そうとしたその時!!!
サリナ「説明しましょう♪」
アキ&アキト「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
後ろから意外な人物に声をかけられて二人は驚いた。
背後にいたのはエステバリス開発者、サリナ・キンジョウ・ウォンである。
サリナ「なによ、人をお化けみたいな目で」
アキ「っていうか、一体何時からそこにいたんですか!葛飾区限定アーキテクトさん!!!」
サリナ「誰が葛飾区限定か!!!」
アキ「それはどうでもいいですけど・・・」
サリナ「いや、よくないって・・・」
アキ「いつからここに?っていうか、なぜナデシコに乗っているんですか?」
サリナ「いつからと聞かれれば月を飛び立った最初から。
なぜと問われればコスモスまで乗せていってもらおうと思って。」
アキト「その人がなぜ訓練用の道場なんかに・・・」
サリナ「もちろん!エステバリスの解説と言えば、この本家説明お姉さんのサリナ様の出番でしょう!」
胸を張って答えるサリナ
だが、蒼白になったのはアキだった。
アキ「ダメ!解説とか説明とか言ったらあの人が来る〜〜(汗)」
サリナ「来たからといってどうなるというの?あんな時代遅れが」
アキ「だからそんな火に油を注ぐような事を・・・」
アキがサリナの口を塞ぐが時は既に遅かった。
???「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ
説明してと私を呼ぶ!!!」
アキ「ああああああああああああ!やっぱり〜」
???「ナデシコのよい子からの疑問難問に答えましょう!
知恵と教養の人、クィーンイネスただいま参上!」
なんかどうやって登ったのか知らないが、天井の窓に白衣に悪の女王様ルックの女性が立っていた。
・・・・・・とうとうやっちまったかい、イネスさん(爆)
アキ「・・・・イネスさん、今お悩み相談室実施中なんじゃ・・・」
イネス「大丈夫、身の上相談2号に任せてきたから」
アキ「身の上相談2号って・・・」
医療室のホウメイ「っていうか、年食ってりゃ相談事が得意に見えるのかねぇ?(苦笑)」
他人の愚痴を聞かされて辟易しているホウメイであった。
イネス「観念しなさい、類似商品娘!」
サリナ「誰が類似商品娘よ!この廃棄姫・・・もとい廃棄女王!」
イネス「ファンタジー文庫のパロディーは止めなさい!元祖説明お姉さんは私よ!」
サリナ「もうあなたの時代は終わったよ!
本家説明お姉さんは私のモノよ!」
アキ「・・・こっちだけで話を進めましょうか?」
アキト「そうですね・・・」
なんか当の本人達を放っておいて言い争いを始めるお姉さん方であった(笑)
ブリッジはほとんどもぬけの殻である。
ルリ「まぁ、衝撃の事実を聞いた後ですから無理もありません。
正義のヒーローとして謎の無人兵器と戦っていたと思っていたのに、戦っていたのは実は人間で実際にはただの戦争だった・・・ってわかったんですから。
これで悩まない方がおかしいんですが・・・」
そうボソッと言うルリはちらりと横目でとある人物を見る。
ユリカ「そうなのよ、アキトもショックなのよ。
だから恋人である私が優しく慰めてあげないと・・・」
ルリ「人間、全てを自分の都合の良い方に解釈できたら幸せでしょうね。
それはともかく、自分がこれからどうすべきか悩むクルーの方々が続出。
イネスさんとホウメイさんのお悩み相談室が大繁盛しており、皆さんそこに並んでまで相談に行っているという・・・」
ユリカ「そうなのよ!愛するアキトが悩んでいるの!
だから私が相談に乗ってあげないといけないのよ!
アキト、待ってて!今行くから!!!」
ユリカはやおら拳を握って叫ぶとブリッジを出て行った。
ルリ「・・・ということで私も退出してよろしいでしょうか?」
エリナ「オペレータがいなくなるのは不味いでしょ?」
ルリ「・・・ラピスってば」
ルリはエリナに出て行かないように睨まれて毒づいた。
で、一応サブオペレータのラピスはというと・・・
ハーーーー
キュッ!キュッ!キュッ!
ハーーーー
キュッ!キュッ!キュッ!
ラピス「奇麗にな〜れ♪」
整備員「ラピスちゃん、熱心だね」
ラピス「ピカピカにするの♪」
整備員「・・・もしかしてそいつに『アルフォンス』とか名付けてるの?」
ラピス「何言ってるの?これは『Princess of Darkness』っていうの。
そもそもアルフォンスってなに?」
整備員「いやぁ昔見たアニメにそんな風にしている主人公がいたんだけど・・・知らないならいいよ(苦笑)」
ラピス「ん?」
整備員は苦笑したが、確かにPODを愛おしそうに磨き上げているラピスの姿を見たら某アニメの主人公と見まごうだろう(笑)
アキ「さて、IFSとは思ったことをダイレクトに兵器へ伝えるシステムよ。
でもなぜ思った通りのことをエステバリスが実行できるか不思議に思わない?」
アキト「思いますけど、何故ですか?」
アキ「それは・・・」
イネス「それはIFSがあなたの思ったことを元にコマンドを自動生成しているからよ♪」
アキ「い、イネスさん、割り込まないで・・・」
アキが説明しようとしているところにイネスが体を割り込ませてきた。
イネス「例えばパンチを繰り出す・・・かなり漠然としたイメージね。
でも実際にはあなたの頭の中ではパンチを繰り出すとき目標との距離、繰り出す速度、腕の角度、足の裁き方などなどのイメージが付随して発生するの。」
アキト「でも俺が最初にエステに乗ったときには全然知らなかったのにゲキガンパンチとか出来ましたよ?」
イネス「それはあなたの頭の中にゲキガンガーというアニメのイメージがあったからよ。つまりゲキガンパンチのイメージをIFSがワイヤーフィストに変換したの」
アキ「つまり、アキト君のようにアニメなどを見ていて比較的イメージングがはっきり出来る人はエステバリスを上手く動かせるの」
アキト「でも俺、パンチとか格闘技出来ないですよ?
射撃だって下手だし」
アキ「それは・・・」
サリナ「あんたバカじゃない?操縦者がろくなイメージングしないからといってでくの坊になっていたら兵器失格じゃない」
アキ「さ、サリナさんまで・・・」
今度はサリナも乱入(笑)
サリナ「つまり、エステには予め格闘戦やら射撃戦の理想的なモーションパターンや目標までの制御データが入っているのよ」
だからここに銃を撃ちたい・・・って思ったらそこに撃てるの。
どこぞの出来の悪いバ○オハザードじゃあるまいし、照準なんてオートで付くに決まっているじゃない。」
アキ「まぁそのゲームが出来が悪いかどうかはともかく、エステはかなり漠然としたイメージでもそれを補完してなんとか動いてくれるというわけ。
わかった?」
アキト「つまり俺が今まで戦えていたのはエステのお陰だったんですね?」
アキ「その通り。でもこれには自ずと限界がある。
いくらある程度補正が入るとはいえ、エステはやはりパイロットが動作をイメージしないといけない。補正のみで動作させたとしてもそれでは全ての状況に対応できないし、全ての状態に最適な補正ができるとは限らない。
所詮は機械だからね」
サリナ「あ、それって侮辱?」
アキ「いや、そういう事じゃなくて・・・」
イネス「まぁ、手足を動かすならともかく、戦術を組み立てたり、状況を判断したりするのは今のコンピュータ技術でも無理ねぇ。
そんなことが出来るぐらいなら木星人達の本星に無人兵器を送り込めているわね」
サリナ「だから今究極のAIを研究しているんでしょうが!
オモイカネしかり、高機動戦フレームしかり!」
イネス「そんな出来もしないものをウジウジと・・・」
サリナ「何ですって!」
アキ「あの・・・思いっきり話が脱線しています(汗)」
なんか説明お姉さんが二人混じってわかりやすいのかわかりにくいのやら
ゴチャゴチャになりかけているのをアキが何とか立て直す。
アキ「つまり、エステを上手に動かすには補正なんかに頼らなくて済むぐらいより詳細なイメージが出来た方がいいの。
でもアキト君のように体験していないけど見ていたからイメージできる・・・ってタイプのパイロットはどこかで戦闘レベルが頭打ちになるの。」
アキト「・・・何故ですか?」
イネス「だって、アキト君はブルースリーの映画を100回見て動きを覚えたとしてもその通りに動ける?」
アキト「・・・動けないッス」
イネス「イメージは出来ても実際の肉体がそのイメージを再現できないからよ。
より正確に言えば人間は意識的なイメージで体の筋肉が動く訳じゃない。
肉体に無意識のうちにイメージがインプットされて、意識が無意識のトリガーを引き起こすの。」
アキト「・・・わかんないッス(汗)」
イネス「走ろうというイメージは出来ても足を前に出すという行為は無意識でしょ?」
アキト「あ・・・・」
サリナ「それをエステに置き換えると無意識はさっきの補正機能と思えばいい。
で、あなたのイメージを引き金に無意識の補正機能が働くの」
アキ「二人とも黙って!」
我先に説明しようとする二人を押しのけて説明するアキ
これからが肝心なのだから。
アキ「で、本題はこれからだけど・・・
例えば私がパンチを繰り出す!
これをアキト君はどうする?」
アキト「え?うわぁ!!!」
アキはいきなり拳をアキトに繰り出す。
思わず腕で顔を庇うアキト
アキ「判断が遅い!
今アキト君は顔を庇った。
これが本当のエステならどうなる?」
アキト「あ・・・」
サリナ「まぁエステは顔を庇うでしょうね」
アキ「本当はかわした方がいい。
でもアキト君は顔を庇うというイメージを作った。エステは当然同じように動こうとする。これは条件反射だからね。
でも高度な格闘技においてこれらの応戦行動はほとんど条件反射に近い無意識によって行われる。
これはカンやセンス、ヒラメキだけじゃない。
格闘技としての無数の訓練の末に体に刻み込まれたほとんど無意識の領域によって行われるの。どこかでアニメを見ていたから容易に繰り出せる・・・そんなモノじゃないわよね。」
アキト「確かに・・・」
アキ「だから本当に強くなるのは格闘技、砲撃など実際の肉体で経験しているアカツキ君やリョーコちゃんの様なタイプの人達なの。瞬間の判断、刻々と変わる状況、決してパターン化されない戦況、それらに対応するには肉体の経験が無意識のレベルまで昇華されるしかない。
エステの補正が入る余地のないほど無意識による詳細なイメージングをするしかない。
それは重要な場面で決定的な差がでる。
コンマ数秒早く先に相手に照準を合わせられただけで死に直結する。」
アキト「だからアキさんのPODはあんなに強かったんですか・・・」
アキ「そうよ。あんな動き、ただアニメを見てイメージングを鍛えたからといって出来ることではないの。
だからエステバリスは人型であり、極めるのがもっとも難しい兵器なの。」
アキト「・・・つまり実際に生身の体で強くなれって事ですね?」
アキ「その通りよ♪」
アキは真意が伝わったようでにっこり笑った。
だけど・・・
サリナ「だからなぜエステが人型かというと人間の経験を最大限に生かす為ね
詳しく説明すればIFSがイメージフィードバックと呼ばれるかというと、実際にはイメージを受け取るだけじゃなく、エステの観測データもイメージとして本人に返しているわけなのよ。
なぜそんなことをするかというとたとえば物を持つという行為に対してイメージだけを一方通行にした場合、持った物が重いのか軽いのかわからなければイメージは漠然としたモノになるわ。たとえば本当は重い物なのに本人のイメージは軽いままだとイメージと実際が大きく食い違ってしまう。
だからエステから重いというイメージに補正してあげるの。するとパイロットは重いというイメージを元に行動を修正するの。
これがフィードバックシステムと呼ばれる所以ね」
イネス「で、なぜ人型でないといけないかというと、このフィードバックが主に人間の主観的な感覚に頼る代物になってしまうの。
たとえば4本足の機動兵器を作ったとしても四つ足になって走るイメージなんて高度な物をひねり出せないでしょ?
だから操縦する人間が一番ポテンシャルを引き出せる人型が選ばれたの」
サリナ「あなた!人の台詞を盗らないでよ!」
イネス「なによ!説明は私の職分よ!」
サリナ「エステの説明を他人に任せられますか!」
ギャァ!ギャァ!ギャァ!
ビー!ビー!ビー!
取っ組み合いのケンカを始めるイネスとサリナ
それを横目で見ていたアキとアキトは・・・
アキ「ほっといて特訓続けるわよ」
アキト「そうですね・・・」
無視して気の済むまでやらせておこうと思う二人であった(笑)
「アキト〜アキトどこ〜」
一人アキトを捜すユリカ
彼女はなぜか医療室で行われている「お悩み相談室」に参加する人達の行列にぶつかった。まぁ、人の多いところにアキトはいるだろうという思惑からか。
で、相談者の列はそんなユリカを後目に各々の悩みをぶつけあっていた。
ジュン「確かに同じ人間と戦っていたのはショックかもしれない。
でもだからといって僕らはむざむざ滅ぶわけには行かない。
ここは連合軍と協力して彼らを退けないといけないと思うんだ!」
整備員「そりゃそうですけど、それって俺達がしなきゃいけないことですか?
俺達民間の戦艦ですよ?」
ジュン「でも放っておいたって敵は来るんだ。ならば誰かが戦わなきゃいけない。
それが出来る力があるのにしないのはただの責任放棄だと思うんだ!」
整備員「そりゃ理屈でしょうけど・・・」
と、その目の前を通るユリカ
ジュン「ユリカもそう思うだろ?」
ユリカ「なら連合軍に入ったら?」
ジュン「・・・・・」
整備員「大変ッスね」
ジュン「慰めはいいよ・・・」
ユリカにしてはキツイ一撃を喰らうジュンであった。
整備員「え?メグミさんって声優だったんですか?」
メグミ「そうなの。」
整備員「なんでまたナデシコなんかに?」
メグミ「真剣に生きている人を捜したかったから・・・かな?」
整備員「真剣に・・・ですか?」
メグミ「そう・・・」
メグミは思い浮かべる。
アキトの姿を
確かに真剣に生きていた。その姿に惹かれた。
でも彼は私だけを見てくれるわけじゃない。
彼は真剣すぎるあまり、誰も彼も救おうとする。
だから戦おうとする。強くなろうとする。
でも・・・人の幸せはせいぜい両手一杯の範囲だ。
自分にはそれ以上追い求められない。
そんなアキトに付いていけないし、幸せの範囲で争って互いを傷つけるに決まっている
この前みたいに・・・
整備員「で、見つかったんですか?」
メグミ「見つかったような、見つからないような」
ユリカ「アキト〜どこ〜」
通り過ぎるユリカを笑って見つめるメグミ
あの人はそんなアキトの本質に気が付いているのだろうか?
そんな目でユリカを見ていたメグミであるが、ユリカは・・・
ユリカ「私のおっきい胸で慰めてあげるから、出ておいでアキト〜♪」
と言って悠然とその場を去った。
メグミ「ピキィ!!!!!!!!」
整備員「・・・・・・・・・・・メグミさん?」
メグミ「んじゃ何ですか?胸が小さいと慰められないとでも言いたいの?」
整備員「い、いや、それは考えすぎじゃ・・・」
遠くのActressさん「ここで引き下がるような女じゃないわよ。
さすが私♪」
遠くのBlue Fairy「って正体がバレるようなこと言わないで下さい・・・」
遠くのPink Fairy「いや、バレバレだって」
ひょっとしたらメグミ復帰ありか?(笑)
ユリカは医療室に顔を出した。
ここにアキトがいるかもしれない、そう思ったからである。
すると、人だかりの向こうでホウメイが誰かの相談にのってあげていた。
ホウメイ「で?今の仕事に自信がない?
二足の草鞋を履くのは大変だ?
でもそのどちらにも好きだからやっているんでしょ?
ゲキガンガーかなんだかしらないけどたかがアニメのコスプレしたぐらいで落ち込むなんてあんたらしくないよ。」
???「・・・」
ホウメイ「え?怒りを抑えられなかった自分が弱いって?
そりゃ誰だって怒ることもあるさ。
だけど大事なのは自分を見失わないことさ」
???「・・・」
二足の草鞋、ゲキガンガー、アニメ、コスプレ、怒り
その会話を聞いたユリカはすぐにピンときた。
ユリカ「アキトだ♪
艦長命令です!皆さんそこを退いて下さい!」
ユリカの命令に何事かと思いつつも道を譲るクルー達。
さてさてそこでユリカが見たモノは・・・
ホウメイ「だからさぁ、いくら怒りにまかせてやっちまったからと言って、そんなにしょげることないだろうに・・・」
イネス「でもクイーンイネスよ。自ら封印して決してやるまいと心に誓っていたのに・・・」
ホウメイ「まぁ、そのコスプレを見れば確かに後悔するわねぇ(苦笑)」
イネス「悪の女王ルックなんていくら魔が差したとはいえ・・・
もうお嫁にいけないわ!!!」
泣き出したイネスに辟易するホウメイ
それを見たユリカは・・・
ユリカ「イネスさん、お嫁に行くつもりだったんですか・・・」
イネス「って、突っ込むところがそこかい!!!!!」
なんか的外れなところにツッコミを入れるユリカであった。
しばらくイネスに絡まれながらも何とか脱出したユリカであるが、まずいことに通路のすぐ外であまり会いたくない人物に捕まってしまった。
ユリカ「さてと、アキトを捜さなきゃ・・・」
エリナ「ちょっと、ミスマル・ユリカ!」
プロス「艦長、ちょっとお話が・・・」
ユリカ「なんですか?私忙しいですけど・・・」
エリナ「忙しいって何が!!!」
ユリカ「い、いえ、何でもありません!!!」
プロス「お忙しいところ済みませんが、少々艦長のお耳に入れておかないといけない事件が・・・」
ユリカ「事件?」
深刻な顔をする二人に思わず足を止めるユリカであった。
アキ「本日の訓練はこれまで!」
アキト「ありがとうございました〜〜」
やっと終わったアキの訓練
だけどアキトは既にボロボロだった。なのに同じ訓練を・・・いやそれ以上の訓練をしたアキは全然平気だった。
やっぱり鍛えているのと鍛えていないのとの違いみたいだ(笑)
アキ「ちゃんと疲れを残さないようにマッサージをしておきなさい。
明日が辛いわよ」
アキト「正直、もう辛いです・・・」
アキ「そうそう、ちゃんとコックの仕事もやるように。」
アキト「えぇ〜〜!!!」
既にヘトヘトなのにその上コックの仕事なんて・・・
でもアキは有無を言わさない。
アキ「アキト君は何のために強くなりたいの?」
アキト「何のために?」
アキ「そう、何のためなの?」
アキト「・・・ナデシコのみんなを守るためです」
アキ「なら日常は捨てないこと。
日常を捨てて強くなったところでやがて守るべきモノを見失う。
私のようにね」
アキト「・・・わかりました」
アキの過去に何があったのかわからない。けど、それはたぶん真実だと思うから、アキトは素直に頷いた。
アキさんの過去ってどんなだったんだろう?
アキが去っていくのを見ていたアキトであるが、後ろから声をかけられた。
リョーコ「おい、テンカワ」
アキト「リョーコちゃん」
リョーコ「煤けてるなぁ。見てたぜ、特訓」
アキト「あはははは・・・・そう?」
特訓の入り口にも入っていないのにリョーコにそう言われるのが気恥ずかしいアキトであった。だが、リョーコはそんなアキトを羨ましそうに言う。
リョーコ「いや、お前は偉いよ。俺なんてこの戦争がただの人間同士の殺し合いだって知った瞬間戦う事に迷いが生じちまった。
なのにお前は強くなってナデシコを守りたいって言えるんだ。
強いよなぁ」
アキト「強くないよ。ただ守りたいモノもあるし、ああいう人になりたいって人も目の前にいるしね(苦笑)」
そう照れくさそうに笑うアキトをリョーコは羨ましく思う。
自分も勇気を出してアキに強くなりたいと言えたらどんなにいいかと思う。
でも・・・
リョーコ「にしてもお前も無謀だよなぁ」
アキト「やっぱりそう思う?」
リョーコ「当たり前だろ?あのアキさんだぜ?
これからどんな地獄が待っているか・・・」
アキト「あははは・・・・」
渇いたひきつり笑いをする二人であった。
ユリカ「ア・キ・ト♪」
アキト「ダメだ!」
あの後、重い体を引きずりつつアキに言われたとおり、厨房で料理の研究をしていたアキトであるが、ユリカが甘えたような声ですり寄ってきた。
もちろん、長い付き合いであるアキトにはそんな声を出すユリカがやっかごとしか持ち出さないことを十二分に知っている。
アキト「俺は戦闘訓練とコックの仕事で手一杯なんだ。
んなことはジュンに相談しろ」
ユリカ「でもでも、どうもこれって恋愛ごとみたいなの。
でも私って男の人のこと、アキトしか知らないし・・・」
アキト「・・・・」
恋愛対象として全然見られていないジュンにそっと涙するアキト
だが、そんな他人の心配をしている暇があったら自分の心配をしろよ、ってな感じに事態は進んでいった。
ユリカ「いいから、アキトも来て!!!」
アキト「止めろって・・・痛たたたた!!!
筋肉痛なんだから〜!」
引っ張られていくアキトであった。
さてさてユリカに引っ張ってこられたアキトであるが、改めてその理由を聞いた。
アキト「あのセイヤさんが女性に貢いでいる?」
ユリカ「なんかエリナさんとプロスさんの話を総合するとそうらしいの」
にわかに信じられないが本当らしい。
夜な夜な女性を格納庫の隅に引っ張り込んでいる姿が多数のクルーに目撃されている。
そして確かに発明好きだし、ちょっとした経費のオーバーには目を瞑っていたものの、それがあまりにも目に覆わんばかりの経費オーバーに発展している。真意を問いただして事と次第によっては処罰しなくてはいけない。
エリナ「チリ人の現地妻でもいるんじゃない?」
プロス「ア○ータって名前ですかね?」
ユリカ「いや、それは考えすぎなんじゃ・・・(汗)」
などという会話があったのは内緒の話である。
で、調査に来た二人であったのだが・・・
倉庫の奥からウリバタケ達の声が聞こえる。
???「え?私、初めてで怖い」
ウリバタケ「怖がることはないさ。俺に任せておけば」
???「でもでも壊れちゃいそうで・・・」
ウリバタケ「大丈夫、大丈夫。優しく教えるから」
???「それじゃ、ウリピー信じてお願いしちゃおうかな?」
ウリバタケ「おう、どんとこい!」
???「じゃ、優しくしてね・・・」
その会話を聞いて真っ赤になる二人
・・・なにやら良からぬ妄想をしたようだ。
アキト『ど、どうするんだよ?』
ユリカ『どうするって言われても・・・』
アキト『艦長だろ?なんとかしろよ』
ユリカ『艦長だからって・・・・』
あらぬ妄想で悶えたあげく・・・
ユリカ「えい!」
アキト「うわぁ、押すなよ!!!」
倉庫の物陰から追い出されるアキト
ばっちりウリバタケ達の情事と鉢合わせになるかと思いきや・・・
ウリバタケ「何やってるんだ、お前ら?」
ヒカル「ふたりともデート?」
アキト「いや、そういうことじゃなくて・・・」
ユリカ「ふたりとも何をしてるんですか?」
別に二人は情事の最中じゃなく、ちゃんと制服も着てなにやらプラモデルを片手に色の塗り方の練習をしているだけであった。
ようやく誤解がとけて案内されたのが広いテーブルに置かれたジオラマであった。
アキト「うわぁ、ジオラマじゃん♪35?」
ウリバタケ「48」
ユリカ「なんのこと?」
ヒカル「縮尺の話」
アキトはやはり男の子なのか、目の前に広がるエステバリスのプラモデル群とそれを飾っているジオラマに感動していた。
アキト「結構本格的だなぁ」
ウリバタケ「当たり前だろ?模型は大人のホビーなんだから」
ヒカル「でしょ?結構リアルなんで初めて見たときは感動しちゃった♪」
ウリバタケ「ヒカルちゃんも興味があるっていうから彩色したらどう?って勧めているんだ。」
ヒカル「じゃん♪私のはセーラーバリス♪」
アキト「へぇ〜奇麗だねぇ」
ウリバタケ「アキトもどうだ?」
アキト「いいの?」
と、彼らは盛り上がっているのだが、ユリカにはなぜこんなものがいいのかよくわからなかった。こんな場所を一杯喰って時間のかかる細かいモノを・・・
と、ふと視線を逸らすとそばのテーブルには作りかけのエステ・・・あ、PODが早速作ってある。
あと、なぜなにナデシコでやったユリカウサギに・・・制服姿のユリカにルリちゃん、それにラピスがある。
でも・・・なんか・・・なんとなくむかつく気がする・・・
と、そんなことを考えていると
ウリバタケ「おい、そのあたり作りかけばかりなんだから触るなよ」
ユリカ「はい!・・・・ってそうじゃなくって!!!」
あ、やっと本来の使命を思い出したようだった(笑)
ユリカ「模型じゃないですよね?使い込み」
ウリバタケ「げ!」
ユリカ「そう、使い込みの額が『げ!』って金額になっているんですけど・・・」
ウリバタケ「えっと・・・それは・・・」
ユリカ「正直に言ってくれないと庇いきれませんよ?」
ユリカを敵に回すのは得策でないと判断したのか、ウリバタケは素直に二人を使い込みの原因まで案内することにした。
連れてこられたのは格納庫の一角
でもそこに鎮座していたのは・・・
ウリバタケ「これが使い込みの原因」
アキト「すげぇ」
ユリカ「なにこれ?」
ウリバタケ「仕事の合間に余ったパーツとかで組み上げたんだ。
敵さんも段々パワーアップしているだろ?
少しでもパイロット達を楽にしてやろうと思ってな。
これがウリバタケ謹製Gブラスト戦フレーム、エックスエステバリス!」
ウリバタケの指さした先にあるモノ、それは一台のエステバリスであった。
しかも普通のエステバリスじゃない。
かなり特殊な、ほとんどスクラッチビルドに近いエステバリスであった。
ウリバタケ「月面フレームのパワーとゼロG戦フレームの素早さを兼ね備えた機体!
小さいながらもグラビティーブラストを装備して火力も十分!
通称エクスバリス!」
アキト「エックスエステバリス!」
ユリカ「通称エクスバリス〜!」
エステバリスクラスの機動兵器にグラビティーブラストなんて!
その凄さに息を飲む二人。
これは確かに使い込みとしても額が張るはずだ
でもウリバタケは浮かない顔をしていた。
ウリバタケ「でもなぁ・・・」
アキト「でも?」
ウリバタケ「未完成なんだけど・・・完成させる気力がなくなってよぉ・・・」
ユリカ「なんでまた」
ウリバタケ「目の前にPODって理想的な機体があるし、
第一戦っている相手が人間だって聞いたらなぁ・・・」
脳天気に見えてもウリバタケもある意味正義の味方みたいなものに憧れて戦っていたところがある。それが戦っている相手が同じ人間で、自分たちに正義があるとも言えない状況だ。
大義名分もなくただの泥沼の殺し合いに参加するほど滅入るものはない。
でもそんなウリバタケの感傷を意に介さない者がいた。
ムネタケ「これよ!!!」
ウリバタケ「うわぁ!な、なんだよ、一体!?」
乱入してきたのはムネタケであった。
しかも目が血走っている。
ムネタケ「いいわよ、この性能!敵の巨大機動兵器にも負けない実力!
この機体の成果を持って帰ればまだ巻き返すチャンスがある!
あんた、これを今すぐ完成させなさい!!!」
ウリバタケ「ちょっと待て、お前、俺の発明を自分の手柄にするつもりかよ!!!」
ムネタケの勝手な言いように腹を立てるウリバタケ
だが、追いつめられたムネタケにはそんなこと馬耳東風であった。
ムネタケ「んなことどうだっていいのよ!
あたしはあたしの利益になることならどんなことだってするのよ!
あんたたちの失態のための詰め腹切るなんてまっぴらゴメンなのよ!」
ウリバタケ「って公私混同だろうが・・・」
ムネタケ「そういうあんただって、それ使い込みでしょ?
横領で訴えても良いのよ?」
ウリバタケ「いや、それは・・・」
もちろん、ネルガルが被害を訴えなければ問題はないし、それをムネタケが告発する権利もない。だが、騒ぎは大きくできる。
そして彼の目は本気だった。
ムネタケ「嫌とは言わせないわよ!!!」
ウリバタケ「まぁ完成だけはさせるけど・・・」
事を荒立てても仕方がない。
どのみち完成させる意欲がなかっただけで捨てるつもりはなかったのだ。
まぁ、作るのは良い。
それに、ウリバタケにはエクスバリスを完成させても大して有益ではないことが薄々わかっていたから。
ムネタケはほくそ笑んだ。
これならアマガワ・アキに勝てる。
彼女に対抗するにはこの機体を使うしかない。
なぜかそう心の中で思考が変わっていた。
それは闇の囁き
力を手に入れろ
正義の力を
悪を滅ぼすために
そんな囁きが彼の心を蝕んでいた。
「まぁ、提督はガイ君の死因に直接タッチしていない訳だし、アキト君が提督を追いつめるなんてマネはしないと思うけど・・・」
大丈夫のはずである。
だが、アキの胸にはそんな一抹の不安がどうしても拭えなかった。
数日後、その理由を彼女は知ることになる。
最悪の結果として・・・
ってことで後編に続きます。
取り敢えず前編ですので前回と同様にポストスプリクトは女アキトことアマガワ・アキさんへのインタビューという形式に変えさせていただきます。
アキ「今回はひょっとしてギャグ?」
−そう思います?
アキ「いや、なんとなく最後の方できな臭い雰囲気が漂っていたけど・・・」
−そりゃそうでしょう。この作品、ギャグがギャグのまま続いた試しがないし
アキ「そうなのよねぇ」
−そうそう。たとえば世にも恐ろしいウリバタケ×サリナのガンプラ論議とか
アキ「待て、それのどこがシリアスで恐ろしい!」
−後はアキ vs. ムネタケのラブラブデュエル対決とか
アキ「おい、なぜ頭にラブラブが付く!」
−最後は愛憎劇で愛するアキに裏切られて絶命するムネタケとか
アキ「これ以上男性関係をややこしくさせるなぁぁぁぁ!!!!(木連式柔炸裂!!)」
−・・・・・・というわけで後編をどうぞ。
ちなみに後編の内容とは微妙に違うので予めご了承下さい(笑)
Special Thanks!!
・AKF-11 様
・ぺるそな 様
・望月 コウ 様
・kakikaki 様
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