−アバン−

時はTV本編のいつか
私達は「機動学園3年ナデシコ組」なんてセンスのないネーミングのRPGに熱中しておりました。

ナデシコクルーだけでも暑苦しいのに、3年がある以上、1年生も作ってしまおうってバカなことを考えたお偉いさんがいるのにもまいりますが。

ヒロインに下級生のライバルがいるのは定番なのでしょうけど・・・

どこまでお約束に忠実なんです?


−ナデシコ組・ホームルーム−


「はぁ、下級生ですか?」
ミナトの説明に目を丸くするユリカはみんなの意見を代弁した。
「そうなのよ。なんでも私達のRPGをネルガル関係者さんが見ていたらしくて、自分達も参加したいって・・・」
「これってナデシコだけのプライベートなサーバーじゃなかったんですか?」
「さぁ、そこんところはアカツキ君に聞いたほうがいいんじゃないの?」
「ギク」
ユリカの疑問を切り替えすミナト。向こうのほうでアカツキが首をすくめた。

「どういう事です、アカツキ君。」
「やぁ、まぁウチの研究所でね、ナデシコにハックしている人間がいるんだけど・・・」
「ハッキングって・・・気づいてて止めなかったんですか?」
「まぁ、ナデシコのセキュリティーホールを調べるのにちょうど良かったし、何よりルリ先生がそう易々と重要なデータなんて覗かせないと思って」
「ええ、その通りですけど・・・」
「げ、ルリ先生!!」
アカツキの声に召喚されてきたのはルリだ。
なぜかピースサインをしているが・・・。

「まぁ、身内の恥をさらすのも何だったのですが、ナデシコ組のゲームを見るのに夢中になっているので取り敢えず放置しておきました。」
「う・・・艦長のあたしに相談もなしに・・・」
ジト目で睨み返すユリカだがルリの顔は涼しいままだった。
「ハッカーなんて自分の覗きたい情報の閲覧が困難になるとかえってムキになるものですよ。それとも別の情報に興味を持たれても良かったんですか?
 例えばユリカさんの体重の推移・・・なんてのに」
「ダメダメダメ!!!!」
ユリカは慌てて完全に否定する。右肩上がりのグラフ・・・なんてのを他人に知られた日には乙女としては再起不能だろう。

「まぁ、ゲームへの参加ぐらいいいんじゃないですか?
 どうせアキトさんの転入騒ぎも一段落して刺激が無くなりつつある頃だったんですから。」
「うう、そうかもしんないけど・・・」
「でも・・・ナデシコにハッキングしようなんて度胸のある人間なんて・・・」
ルリはその人物に心当たりがあるのかしばし考えこんでいた。
「ルリちゃん、その人が誰か知っているの?」
「いえ、思い過ごしでしょう・・・」
ルリは自分の考えを振り払った。
よもや作者がTV版の時点でその人物を出すわけがない、そう思っていたからだ。

でもその考えは甘かった。
ハッキングしていたのは、多分皆さんのご想像通り、あの少女である。



第3話 「下級生」で行こう


−校門前−


「ええ〜本当に行くの?」
「当然。あなたもルリに会いたがっていたじゃない?」
「そりゃそうだけど・・・」
「ただでさえナデシコデビューは数年後なのに、このままじゃ差は開く一方!
 ここで挽回せずにいつするの!」
「でも・・・」
「ぐずぐず言わない!
 さっさと行くわよ!!」
少女は少年を引きずるように校内に入っていった・・・。


−全学年朝礼−


とはいっても基本的にはナデシコ組しかいないのだが、壇上では教頭のプロスペクタが校長の替わりに挨拶をしていた。ちなみに校長は・・・ムネタケ提督であるが、何を口走るかわからないので普段は縛り上げている。理事長は・・・例のロン毛1号である。

「え〜〜皆さんに新しいお友達のご紹介です。」
年齢設定は高校生1〜3年であるので、お友達・・・って言い回しもないだろうと一同は心の中でつっこむのだがどうも漫画ではこういう台詞にするのがお約束らしい。

「一年ナデシコB組に転入してきたマキビ・ハリくんと同じくユーチャリス組に入るラピス・ラズリちゃんです。仲良くしてあげて下さい」
プロスの説明に驚く一同。

現れた二人はどちらも10歳に満たない少年少女だ。しかもTV版では影も形も出演していないキャラだったからだ。
『死○文書にはない出来事だぞ?』
『問題ない。登場人物達にはいい薬になったろう』
と筆者の心の中で言い訳されたかどうかはさておき、様々な戸惑いが一同の間をひしめいていた。

「マキビ・ハリです。ハーリーと読んで下さい。
 未熟者ですが、皆さんと仲良くしたいのでよろしくお願いします。」
ハーリーが満面の笑顔で挨拶すると今まで騒がしかった生徒達は途端におとなしくなった。

いわゆる『はにゃ〜〜ん』状態である。
特に女子クルー・・・もとい、女子生徒は『ハーリーくんかわいい』状態にあった。だが、ルリはそっぽを向いていたのでハーリーは心の中で涙を流していた。

「ラピス・ラズリ・・・よろしく」
続いて挨拶したラピスはプロスに促されて渋々それだけを答えた。だがその後だ、みんなを驚かせたのは。

「あ!アキト兄ちゃんみっけ!!」
「へ?」
そう言うとラピスは壇上を飛び降り脱兎のごとく駆け出して、アキトに飛びついた。

「ちょ、ちょっと君・・・」
ラピスはアキトの戸惑いもかまわずしがみつくとさらに恐るべき台詞を堂々と吐いてのけた。
「私はアキトの目、
 アキトの耳
 アキトの口
 アキトの手
 アキトの、アキトの、アキトの・・・」

ピクピクピク!!!!!!!

うっとりとトリップ状態の彼女が口走った発言は、ルリ以下数名のこめかみの血管を激しく動かしたのは言うまでもない。男子生徒達が怯えること、怯えること。

ユリカ「アキト!どういうことなの!」
メグミ「アキトさん、嘘ですよね?ロリコンじゃないですよね!」
リョーコ「アキト、ルリはともかくその年齢はまずいだろ!」
エリナ「アキト君、いつの間に・・・言ってくれれば誤解を招かないように私が保護者として一緒に同伴してあげたのに・・・」
サユリ「エリナさん、アキトさんとつき合えれば彼がロリコンの世界にハマってもいいって言うんですか?」
エリナ「どうせ、このSSってルリちゃんのおこぼれでしか役をもらえないようになってるんだし、せめて役得だけでも狙わないと・・・」
イネス「なかなか現実的ね・・・」
メグミ「そんなことはどうでもいいの!それよりアキトさん!私がさんざんモーションをかけていたのに勃たなかったのはロリコンだったからですか!!」


・・・勃たないって、何が?


一同「「「「メグミちゃん、大胆・・・」」」」
メグミ「ひょっとして貧乳が好きなの!?」
ルリ「う・・・(嬉しいような、情けないような・・・)」
ユリカ・イネス・リョーコ・エリナ・サユリ「「「「「う、うそ!!」」」」」
ルリ「何ですか、その驚きながらも誇らしげな笑みは・・・」
メグミ「そりゃ、私はルリちゃんほど小さくないですけど、それでも女子クルーの中じゃ結構、小振りでも形はいいねって評判なんですよ?」
ルリ『なぜそこで私を引き合いに出すんです?(怒)』
ユリカら+ミナト『『『『『『それって私たちは大きいけどたれてるっていいたいのね?(怒)』』』』』』
ets...ユリカやメグミ、リョーコやエリナなどなど非難轟々だった。

「だぁぁぁぁ!いい加減にしろ!!
 人を勝手にロリコン扱いにするな!!」
好き放題話していた彼女たちに我慢の限界にきたアキトが怒りだした。
「だって!」
ユリカがなおもいい縋ろうとするが、それをルリが遮った。

「とりあえずここらへんでやめておかないとアキトさんの罵倒だけで今回のお話が終わっちゃいますよ?
 いいんですか?この子の正体は次回続く・・・で終わっても」
「う、それもあんまりかも・・・」
「ではそういうことで」
と、この場を納めるルリ。実はアキトの守備範囲が自分の所まで降りてきているようなので少しホッとしていたりする・・・かもしれない。


−場所を移してナデシコ組教室−


「話がそれたので元に戻しますが・・・ラピス・ラズリさん、あなたはアキトさんの何なんですか?」
 ルリはクールフェイス全開でラピスに尋ねた。この視線を直視してしまったら普通の人なら即座に凍り付くことだろう。そのぐらい心底怖かった。
だが、ラピスは平然と受け流した。

「私はアキトの目・・・」
「ルリドリル・・・」

ギュルルルル
グサ!
ズゴゴゴゴ!

「ギャー!!!!!」





・・・しばらくお待ち下さい・・・





「何するのよ!!死んだらどうするの!!!」
「仮想空間だから死にはしませんよ。」
『精神的に再起不能になるかもしれませんが・・・』とルリは心の中で付け加えたが、スプラッタの後片づけをさせられた一同には聞かせられない話である。

「とぼけないで下さい。私が聞きたいのはアキトさんに抱きつく前の台詞ですよ。」
「え〜〜っと・・・」
「次にごまかすとルリ目ビームですからね?」
「う・・・」
ルリの冷ややかな瞳で睨まれてラピスは喉元まででかかったジョークをかろうじて引っ込めた。

「私はアキトの幼なじみなの」
「「「「「うそおおおお」」」」」
驚愕する一同だが、ルリは慌てず騒がずアキトに尋ねた。
「本当ですが?」
「フルフル」
アキトは一同の冷たい視線にさらされて、ただ首を横に振るだけだった。
「ラピスさん、本当にルリ目ビームを食らいたいですか?」
「う・・・本当だもん・・・設定上の話だけど・・・」
「設定?」
一同が聞き返す。
「そう、私のプロフィールは幼い頃からアキトの近所に住んでいて、彼を兄のように慕う美少女・・・って設定なの」
ない胸を誇示するかのように『えっへん!』と胸を張るラピスであった。

「どういうことですか?オモイカネ!!!」
冷静だが、その分顔がマジで怖いルリの様子を察してか、オモイカネは慌てて自分のウインドウを開いた。
『なに、ルリ?』
「誰ですか?こんなプロフィール設定を許したのって。アキトさん関係のアビリティーを付けるのにはかなり高いポイントをつぎ込まないといけないはずですが、初期設定でそれだけのポイントは取得できないはずですよ?」

ちなみにこのRPG、自分の境遇をアビリティーポイントを振り分けることで決めることができる。
みんなの持ち点はほぼ同じ程度なので極端にアキト狙いに走ろうとして優位なアビリティーをつけると他が全て不幸のどん底・・・という境遇になるので注意が必要である。

『う、そ、それは・・・』
「おお、オモイカネが動揺してるよ」
技術の進歩に感慨深げに驚くユリカであった・・・。

「どうなんです?」
『・・・ハックされちゃった、テヘ♪』
器用に愛想笑いの顔文字まで出してみせるオモイカネ・・・こんなコンピュータにした責任の一端が自分にあるのか、開いた口が塞がらないのか辟易しているルリ。
「どうやって?」
『ちょっと細工されてアビリティーポイントをマイナスにすることが出来るようにされてしまいました。彼女はアキトの幼なじみというアビリティーを得るために他のポイントの多くをマイナスにしてでもポイントを上乗せして強引に突破してしまいました。』

「例えば?」
『アキトさんご本人には唯の妹としてしか思われていないとか
 決して自分の恋心を気づいてもらえないとか、
 決して恋人として結ばれないとか、
 すぐ迷子になるとか
 すぐ転ぶとか
 みんなのおもちゃにされるとか
 コマ埋めの存在にされるとか・・・』

『不幸だ・・・』
一同は心の底からそう思った。
そこまでしてでも漫画ではお約束の『アキトの幼なじみで妹的な存在』になりたかったのか、いまいちわからなかった。
「だって、最近じゃ妹でも結ばれる隠しシナリオがあるもの!
 それにかけてるの!」
またも、ない胸を誇示するかのようにふんぞり返るラピス。

・・・あの、これは18禁ゲームじゃないんですけど・・・

「いいなぁ、私も何かアキト関係のアビリティー付けようかな・・・」
ユリカが恨めしそうにいう。
「ユリカさんは既に『幼い頃アキトさんと隣近所だったが、その後引っ越して高校に入る頃になったらすっかり忘れられていた』っていうのを付けてるじゃないですか?それで満足できません?」
「だって、それってあんまりだよ。せめて・・・」
ルリのツッコミに嫌々するユリカ。

「『アキトさんに昔の自分を思い出してもらう』というアビリティーを付けるには同程度のマイナスアビリティーを付けないと・・・」
「たとえば?」
「『時既に遅く、ユリカさんは親の決めた許嫁としてジュンさんと婚約させられてしまっていた』っていうのです」
「い、いや!」
「ユ、ユリカ・・・」
ルリの提案にユリカの速攻で拒否した。ジュンが心の中で涙を流したのはいうまでもない。

「んじゃ、こんなのはどうです?
『昔、子供のころアキトさんと結婚の約束をしていて彼がなかなか思い出してくれない』ってアビリティーは?」
「・・・・うれしいけど・・・どんなマイナスアビリティーがつくの?」
ルリの挙げた事例に恐れも知らず尋ねるメグミ嬢。
「『時既に遅く、親の決めた許嫁としてムネタ・・・』」
「いやあああああああああああああ!!
 わかった!!言わなくてもわかったから止めて!!!
 その人の名前を聞いただけで今晩夢にうなされちゃう!!」
メグミはルリが全てを言い終わる前に悲鳴を上げて遮った。

だが時既に遅し、
その場の女性一同は自分が名ばかりとはいえ、あのキノコ頭と婚約させられている風景を想像してしまっていた


サーと血の気の退く音が流れ、周りの温度が2、3度下がってしまった。
しばし凍りつく一同

「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」




どうやら怖い考えになってしまったらしい・・・




「グ・・・わかってたとはいえ、ボディーブローの様に効きますねぇ・・・」
ルリは自分で言っておきながら、不覚にもその光景を想像してしまってダメージを受けていた。

『!』
だが、ムネタケを知らないラピスはその瞬間を見逃さなかった。

「スキあり、ホシノ・ルリ!!!
 食らえ!
 ○ルディオン・ハンマー!!!!!!!!!!」
皆が精神的なダメージを受けて呆然としているスキを狙って、ラピスはいつの間にツッコミ用にと金メッキされてゴの字のマークが入ったピコピコハンマーを取り出すと、ルリめがけて思いっきり振りかぶっていた!!

「原子の塵となって消え去れ!!!」
※筆者注:唯のピコピコハンマーなので原子分解は起こせません。金粉を振りまくだけです
「・・・甘いですね。ルリシールド・・・」
ルリはラピスの猛攻に気づいたが、慌てず騒がずある物をとりだした。

ピコ!!

「ル、ルリさん・・・ひどい」
ルリのオプション武装ルリシールド。
その実体は何のことはない、ハーリーの体を使って防いだだけのことである。
「ちなみに、張本人はこのハーリー君ですので」
とおまけで訳の分からないことをいうルリであった・・・。
※筆者注:よい子の皆さんはたとえ相手が下僕であろうとも盾の代わりにしてはいけませんよ。

「ち、殺りそこねたか!」
「んじゃ、反撃行きます、ルリ目ビー・・・」
「必殺!ラピスシールド!!」
「「「「「おおおおお」」」」
一同はラピスの見事な回避法に感嘆の声を上げた。

「説明しましょう!」
久々の出番にハリきるイネス。
「『ラピスシールド』は別名『お兄ちゃん、私何にも悪い事していないのにあの娘がいじめるの』ディフェンスと呼ばれているものよ。
 これは恋のライバルとして登場した妹キャラがヒロインをいじめたあげく、反撃されるタイミングのところを主人公の陰に隠れてヒロインの印象を悪くしようという、妹キャラのお約束的伝統技なのよ」
「解説ありがとう、イネスさん」
アキトはそんな解説をするより、自分の後ろに隠れながらルリに『い〜〜だ』をするラピスをどうにかして欲しかった。


「んんんん!」
「おお、ルリちゃんが珍しく悔しがってますねぇ、アカツキさん?」
「確かに愛しのテンカワに攻撃は加えられませんからねぇ、ウリバタケさん?」
「・・・ルリ目ビーム!」

ビビビビビ!!!

「「ぎゃぁぁぁぁ」」


鬱憤をアカツキとウリバタケで晴らすルリであった。


「そんなわけで皆さん二人と仲良くして上げて下さいね」
何の脈絡もなくその場を終わらせようとするプロス、あなたが一番大人かもしれなかった・・・。


かくしてナデシコ学園に新たに暑苦しくもおかしい人達が二人加わったのであった・・・。

−ポストスプリクト−


というわけで不定期連載「学園物」で行こう!の第3話でした。

って全然オチてない!(苦笑)
すみません、ほとんどの中身のない話で。
具体的に結末まで考えずに成り行き任せで書いていったのが運の尽きで、ほとんどパロディーだけでお話を繋げていってしまいました。
まぁ、これはこれでおもしろいのでしょうが、ラストの引きがいまいちでした。

ともあれこのシリーズはこんな感じで行くつもりなので次回に期待しましょう(爆)


あと、切実にネタプリーズ中です(苦笑)

では!

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