アバン


人の心が移ろいゆくように正義の価値も時として変わりゆくもの
心の世界の領域は自分の立つべき位置で広くもなり狭くもなる
心の中の正義は他人の正義と交わり、ぶつかりそして拒絶していくものだから
時として『昔の僕の正義』は『今の私達の正義』ではなくなることもある

でも人の心がその変化に耐えられるものならば、
どうしてこれほど心が痛むのでしょうか?

ああ、一応このSSってPrincess of White とDC版The Missionの続編ですので
よろしく



ナデシコC・ブリッジ


「・・・ってことで今回の戦いはあくまでも敵の足止めが目的です。
 ですので前回みたいに深追いはせずにやばくなったらすぐ逃げますのでそのつもりでお願いします。」
ユリカが脳天気に作戦内容を伝えた。

「・・・特にリョーコさん。前回みたいにムキになって泥沼にはまらないで下さいね?」
『ういっっす〜〜』
ルリの厳しい念押しにリョーコは反省サルのような情けない顔で答えた。
「次にハーリー君、いつまでしょげかえってるんですか?」
『・・・・』
この前ルリに言われたことがよほど堪えているのか、ハーリーは落ち込んでほとんど答えなかった。

ため息をつくとルリはちょっと小悪魔のような表情をしてこう言った。
「そうそう、今回の戦闘ではアキトさんが最初から出撃されますので期待して下さい。」
「「「「ええ!本当!?」」」」
「そうですよ♪」
ルリはうれしそうな表情をしながらサブロウタに目配せをした。するとサブロウタもその意図に気がついたのか、ルリに調子を合わせるようにこう言った。
「んじゃ、安心だな。『誰かさん』が落ち込んでても『テンカワ・アキト』がやっつけてくれるか!」
やたらとそこを強調するサブロウタ。それにカチンときたのかキッっと睨むハーリー。

同調者はさらに続く。
ユキナ「そだね。アキトさんがいれば別に『システム掌握』なんてしなくったって敵を倒せるものね」
ハーリー『うう』
ミナト「ちょっとユキナ。そういう言い方は失礼だよ?ひょっとしたらまぐれでもシステム掌握出来るかもしれないのに」
ハーリー『ううう』
ジュン『ミナトさん、それはそれでもっと失礼だよ・・・』
ヒカル『でもアキト君がいれば鬼に金棒だよね!』
ハーリー『うううう』
ウリバタケ『ま、お子ちゃまが闇の王子様に勝とうなんて本当に十年早いんだよ』
ハーリー『うぐぐぐぐ』
ルリ「ああ、ハーリー君。皆さんの言うことは気にしないでかまいませんからね。」
最後のルリの言葉に耐えかねて、ついにハーリーは爆発した。

ハーリー『この不祥マキビ・ハリ少尉!必ずや火星の後継者たちの艦隊をシステム掌握して見せます!!!!!』
ルリが心の中でにんまり笑ったのは言うまでもない。

「ほんと、ルリルリって裏から男をコントロールするの上手くなったよね」
ミナトはしみじみ言うがルリは丁重に無視した。

だが、このことが後に重大な失態を引き起こすとはそのとき誰も想像だにしなかった・・・。



Nadesico Second Revenge

Chapter18 不敗神話が崩れるとき



戦闘空域


戦闘空域では既に両軍がにらみ合いをしていた。
先に動いたのはナデシコ艦隊だった。
「皆さん、行きますよ!」
「「「「おお!!」」」」
出撃したのはケンやリョーコら5機のサレナカスタム、それにライオンズシックル隊のエステバリス9機、そして・・・

「黒百合が現れました!!」
火星の後継者の艦隊全域に緊張の声が走った。

あのヒサゴプランの各コロニーをたった単機で壊滅させた男、
火星の後継者、最強にして最狂の男、狂犬北辰を打ち破った男、
現存する数少ないA級ジャンパー・・・

Prince of Darkness.....

黒百合ことテンカワ・アキトが愛機ブラックサレナを纏って戦場に現れたからだ・・・。



火星の後継者・ヨーロッパ方面軍旗艦・かんなづき


「くくく!とうとう出てきたか!黒百合!!
 ナイチンゲールを出せ!
 俺が直接相手をしてくれる!!」
西條はヤマウチに作戦内容を言い含めると、席を立つと格納庫に向かった。
彼自身の手で直接テンカワ・アキトと対決するために・・・



戦闘空域


「なぁヒカル?」
『なぁにリョーコ』
「素朴な疑問なんだけど・・・
 ブラックサレナとホワイトサレナってどっちが強いんだ?」
リョーコは惚けたように尋ねる。それに答えるヒカルは呆れた様子であった。
『あれぐらいになると比べる物差しが足りないよね』
『『言えてる』』
サブロウタもイズミも同意した。それほどテンカワ・アキトのブラックサレナの戦闘ぶりはすさまじかった。

ブラックサレナが突撃する軌跡には盛大な火花が飛び散った。気休めに出撃してくるバッタたちなどものの数ではない。ステルンクーゲルなどはアキトを恐れてまともに組み合おうとすらしなかった。
目まぐるしく敵機を打ち落としていくブラックサレナを見ながら、リョーコらは凡人の悲哀を噛みしめて敗残兵の掃討に当たっていた。

だが、次の瞬間、戦局は一気に流動的になった。

『ボソンアウト反応!推定20m相当の機動兵器です!』
「なに?」
ナデシコCからの通信にリョーコらは目を丸くした。
目の前に何かが実体化し始めた。
まるで魚のような、そして鳥のような大型の機体・・・

『黒百合、勝負だ!!』
愛機『ナイチンゲール』を駆る西條はそう高らかに宣言した・・・。



綻びの理由


まず考えられるのは両軍の指揮官のこの戦闘に関する目的の違いであろう。

テンカワ・ユリカにとってこの戦闘を単なる時間稼ぎの戦闘と想定していたことである。
それは彼女の戦略プランからすれば至極当たり前のことであった。

いくらテンカワ・アキトが参戦しようが所詮は局地戦の一時的な勝利である。最終的に勝敗を決めるのはやはりシステム掌握の可否である。
しかし敵のシステム掌握に対するプロテクトは意外に強固であった。これを破るには何より敵プロテクトシステムの情報収集が必要であり、あと一、二度戦ってみてデータ収集する必要があった。

だから今回の戦闘はあくまでもデータ収集の為のものであり、通常戦闘で勝てれば儲けもの、不利となるやとっととボソンジャンプをして逃げ去るつもりでいた。

対する西條数馬は全く正反対の考えを持っていた。
彼自信、何時までも自分のシステム掌握に対するプロテクトが有効などとは慢心していなかった。あと一度か二度で破られる。その前に決着をつけておきたい。
そのために彼はこの戦闘で決着をつけるべく様々な切り札を用意した。
その一例が彼の駆る機動兵器『ナイチンゲール』である。彼の作った機動兵器の中でも最高傑作と自負する決戦兵器である。
彼のこの戦闘にかける意気込みは凄まじかった。

まずこの両者の温度差が後の歯車の狂いを生み出したのかもしれない・・・



戦闘空域


「なんだ、ありゃ?」
一番最初に声を出したのはリョーコであった。
『説明しましょう!!』
そこに出番とばかりにウインドウで解説しだしたのはサリナ・キンジョウ・ウォンであった。未知の機動兵器ということもあってさすがに説明おばさんのイネスも今回は白旗を揚げていた。



本家なぜなにナデシコ


皆さん、こんにちわ。サリナ・キンジョウ・ウォンです。
目の前の機動兵器の外見からざっと性能を推し量ってみましょう。

まず機体のベースとなる部分は皆さんもお察しの通りかつて北辰の部下が搭乗していた『六連』と思われます。しかし一番驚きなのはその背中に付いた大きなユニットです。
これは大きさと形状、そのとりつく場所、何よりあの機体がボソンジャンプをして現れたことから勘案すると小型の相転移エンジンである可能性が極めて高いと思われます。

そしてこのユニットから両肩、両脇を通り越して前方に出現している4本のアームですが、その形状から察するにかつてのエックスエステバリスが装備していた小型のグラビティーブラストと考えて良いと思います。
そしてさらに相転移エンジンから突出した二枚の長いウイング形態のものはディストーションブレードと考えられます。つまりかなり強固なディストーションフィールドを展開できると思われます。

まぁ、だいたいこんな感じかしら?



再び戦闘空域


「おい、それって・・・」
リョーコがうめくように言う。ケンやサブロウタらもその意図を察したようだ。
『そう、たぶんあのジンタイプのダウンサイジングに成功したという事ね。』
サリナが同意するようにつぶやく。
ジンタイプ・・・かつて火星会戦中期から後期にかけて猛威を振るった木連側の機動兵器である。相転移エンジンを内蔵した事により強固なディストーションフィールドとグラビティーブラストを装備し、なにより短距離ながら単独でボソンジャンプを行えるという強力な機動兵器である。
しかしもっとも致命的だったのは技術力不足により相転移エンジン他のパーツをすべて古代火星文明の残したプラントに頼らねばならなかったこと、そのために小型化がままならず機体のサイズが非常に大きくならざるを得なかったことである。
結果として鈍重で小回りが利かず、フィールドランサーやレールカノンなどの対ディストーションフィールド兵器が充実するに従ってエステバリスなどの機動兵器に機動力の面で対抗できず陳腐化してしまったのだ。

だが同じ発想で、もし小型化と機動力の向上が計れれば?

かなり強力な機動兵器になることは明白であった。

「んな訳ないでしょ!
 背中がガラ空き!
 ウドの大木はとっとと沈んで!!」
イズミは大型レールカノンを連射する。この距離なら機動兵器のフィールドなど打ち抜けるはずであった。

しかし・・・

ギン!!

「なんだ!?」
彼らが驚くのは無理もない。
その弾丸はバッタ型機動兵器のフィールドによって防がれたのだ。

『ああ、言い忘れたけど、あの機体の背中にコンテナらしきものがあってね。
 たぶんバッタ系の機動兵器が入ってると思うの。
 んで、重力波ビームを照射しているようだからバッタ単体でもかなり強固なディストーションフィールドを展開できると・・・』
「だぁ!うるさい!!」
嬉々として説明しようとするサリナのウインドウをリョーコが追っ払った。
そんなこと言われなくてもわかっている。敵の機動兵器から出現したバッタたちにはピンポイントのディストーションフィールドが展開されていたからだ。たぶんレールカノンではかなり至近距離から当てないと防がれてしまうだろう。

つまり、大型の機動兵器の不得手である接近戦をバッタ系の小型無人機動兵器でカバーし、中遠距離の敵にはグラビティーブラストにて対抗する。旧来のジンタイプの弱点を補う事を主眼に置いた機動兵器に仕上がっていたのだ。

『おもしろい!
 そいつは俺が狩ろう!!』
アキトはそういってナイチンゲールに向かっていった。
「こら、アキト!こいつは俺達の・・・」
『スバル中尉、ここはテンカワさんに任せましょう』
おいしいところを取り上げられそうになって怒るリョーコをテンクウ・ケンが制した。
この強力そうな機動兵器の相手をするのも確かに重要だが、同時に敵はそれだけではない。ステルンクーゲルやバッタなどの機動兵器はまだ存在するのだ。全体のバランスを考えれば『ナイチンゲール』にはアキトによるブラックサレナ一機で足止めしてもらい、ケン達サレナカスタムの部隊は敵の機動兵器部隊を迎撃した方がよい。

「わかったよ・・・」
リョーコにもその理屈はわかるから彼女は渋々従った・・・



ナデシコC・ブリッジ


ブラックサレナとナイチンゲールとの戦闘にブリッジは湧いていた。
「わーい!アキトかっこいい!!」
ユリカが脳天気に黄色い声援をあげているが、それはけっして周りのクルーが呆れる類のものではない。なぜなら周りのクルーですらその戦いに見惚れていたのだ。

敵の攻撃を紙一重で見切り、すぐさま反撃する。まるで舞台の演舞を見ているような軽やかさであった。戦いを見ていてこれほど胸をおどらされるのも珍しい。

皆が歓声をあげる中、ルリは一緒に騒ぎたい気持ちを抑えて職務に忠実に働いていた。
「ハーリー君、アキトさんが敵の注意を引きつけているうちに敵システムに軽くアタックをかけてみて。反応を見ます。」
『わかりました!』
ハーリーは張り切って返事をするが、ルリはクギを刺すのを忘れていなかった。
「あと、ロギングは忘れずに。
 無茶だけはしてはいけませんよ」
『わかってます!!』
ハーリーは子供扱いされたのに少し腹を立てた。そしてルリがアキトの活躍に見惚れているのは間違いなかった。そう思うと幼いハーリーでも俄然対抗意識が湧くのであった。

『ボクがシステム掌握してテンカワ・アキトを見返してやるんだ!!』
若さゆえの無鉄砲さがこの場合は仇となる事にハーリーは気がつかなかった・・・。



綻びの理由


西條が『本来の運用コンセプト』からはずれてナイチンゲールを戦線に投入したのには訳がある。
彼はひたすら待っていた。
ナデシコBがシステム掌握してくれる事を。

ルリは自らシステム掌握する事を避けていた。ルリ自身がシステム掌握を行なう場合に効力を温存する為、自身のハッキングログを残す事を恐れてハーリーにハッキングさせていた。
それは同時にナデシコ艦隊のハッキング能力を敵に誤認させておく意味合いもあった。

だが、西條は過去の傾向からその意図を正確に把握していた。
過去、ナデシコ艦隊がハーリーでしかシステム掌握をかけていなかったこと。
そのロギングデータが残っているがためにオペレータのハッキング手段とその傾向を類推できた事。
そして今までの用心深さからシステム掌握を確実に実行できるまで向こうが静観を決め込むという事を。
何よりそのオペレータの技術の稚拙さを!

だから西條は自らを囮にして通常攻撃で押し切るというフリをし、アキトの攻撃に耐えながらひたすら待ったのだ。未熟なオペレータが無理をするその瞬間を!



ナデシコB・ブリッジ


『よし、糸口を見つけた!』
ハーリーはほくそ笑んでその手がかりに飛びついた。
普段の彼ならそれがミエミエの罠である事に気がついたであろう。が、今の彼は自らの功名心のためにその視野を狭くしており、その罠に気づく余裕がなかったのだ・・・



ナデシコC・ブリッジ


その異変に最初に気がついたのはやはりルリであった。
そしてルリの対応は素早かった。

「オモイカネ、ハーリー君の管理者権限の剥奪!
 ナデシコBの操艦は全てラピスへ委譲!!」
ルリの切迫した声がブリッジの全員を緊張させた!!

『ルリさん、残念。
 侵入者は既にハーリーの権限で新規に管理者アカウントを作成。
 トロイの木馬を送り込まれています。』
オモイカネの報告に臍を噛むルリ。だが気落ちしてはいられない。次の指示を出す。
「新規アカウントの作成を全面禁止。
 念のためハーリー君の権限は全て停止しておいてください。
 全艦、警戒態勢パターンSSに移行してください!!」

警戒態勢パターンSS・・・
それを聞いてナデシコ艦隊の全員が戦慄した。
それは対電脳戦高レベル警戒体勢
・・・つまりナデシコ艦隊がハッキングされた事を意味していたからだ・・・。

システム掌握を最大の武器とするナデシコ艦隊がハッキングされる・・・それはクルー全員の心の中で何かが崩れ去る瞬間であった・・・



ナデシコB・ブリッジ


『オモイカネ、防壁展開!
 感染した領域をリストアップ!
 隔離作業を急いで!
 私は敵侵入の駆逐に全力をあげます。
 ラピスに艦隊操艦を全面委譲します!』
『了解』
ウインドウ通信からはルリとラピス、それにオモイカネ達の会話が流れてくる。

「艦内の警戒態勢を強化!
 総員に告ぐ!
 現在本艦は敵のハッキング攻撃に遭っている。どんな事態が発生するか想像もできない!些細な異変にも常に警戒するように!!」
「艦内、落ち着いて被害状況を伝えるように」
艦長が機動兵器で出撃している最中なので副提督のジュンと防衛指揮官のフジタが代わりに矢継ぎ早に緊迫した指示を出す。
「艤装がすべてロックされました。」
通信士のコトネが冷静に状況を報告した。
「武装はすべてマニュアルへ。味方への誤射だけは絶対にさけて」
「了解しました。整備班の方は直ちに現場へ・・・」
コトネはジュンの指示の元、次々と各部署へ連絡を行っていた。

騒然としたブリッジでそんな彼らのやりとりをハーリーは一人蚊帳の外で聞いていた。自分のしでかした事がどんな結果をともなったかまだ理解できないでいた。
ただ呆然と他人事のように聞いていた。

そしてそれらの意味する事を理解した次の瞬間、ハーリーは自分のしでかしたことに慄然とし、そしてブルブルと震え出した。
「あああああああああああ!!!!!!」
ハーリーは声にならない叫び声をあげた。

だが、今ハーリーを気遣ってやれるだけの余裕のあるものなどナデシコ艦隊には誰もいなかった・・・。



ナデシコC・ブリッジ


「ウイルス除去は?」
『抗体がまだです。分析中です』
「全領域に対する全アカウントのアクセス権を削除!
 以降は私の直轄にします。
 全オペレーションを私に回して下さい」
『それでは時間がかかりすぎます。それにルリさんの負担が・・・』
「仕方ありません!全面的に汚染されるよりはマシです!!」
オモイカネの回答に即答する。ルリはいまだに侵入者の対応に追われている。

その様子を見た誰もが気がついた。
この瞬間、ナデシコ艦隊の中枢を握るホシノ・ルリは事実上全く身動きが出来なくなった事を。
そしてシステム掌握が出来なくなってしまった事を
同時にホワイト・サレナという決戦機動兵器も使用出来なくなってしまった事を。

これはナデシコ艦隊のクルー全員に大きな衝撃を与える事になった。
たとえいくら小数の部隊で戦っていようとも、兵力差があろうともいざとなればルリがシステム掌握をしてくれる、ホワイトサレナで撃破してくれるという安心感が常に背後にあった。だからどれだけ大兵力と対峙しようとも平常心を保っていられたのだ。

だが、それがなくなれば?
クルーの全員が浮き足立つのは目に見えていた。

そこでユリカは即決した。
「逃げましょう。」
「「「「はい?」」」」
「各サレナ部隊は帰還してください。
 サレナ各機を回収しだい、ボソンジャンプにて戦線を離脱します」
「了解しました」
ユリカの意図を正確に理解してルリは全艦隊へその指示を送った・・・。



綻びの理由


ユリカの出した結論は素早く、そして的確だった。
いくら敵のハッキングがあろうとも敵の通信の届かない地点にホソンジャンプして逃げてしまえば敵のハッキングからは逃れられる。
敵はどう足掻いても追いかけてこれないのだから。そのうえでゆっくりとウイルスを駆除して態勢を整えてから再度戦場に戻ればいい。
この時ユリカの抱いたプランはこんな感じのものであった。
確かに考えうる最良の方法であった。

ナデシコ艦隊の最大の強みは現存するA級ジャンパーをすべて抱えている事である。
これは取りも直さず、ナデシコ艦隊だけが任意の地点へのボソンジャンプを行える事、そして敵はそれを絶対追尾できない事を意味していたからだ。

つまり、ナデシコ艦隊は自分の好きな時に戦場に現われて、好きな時に戦場を撤収できる。
けっして撤収のリスクを負わずに。
これが小戦力でありながらも大戦力に抗するだけの戦略性を与えていたのだ。

だが、もしもこの利点を崩すだけの技術が存在していたとしたら?



ナデシコC・ブリッジ


「リョーコ機以下、全機帰投しました。」
ユキナのアナウンスを聞いたユリカはジャンプ用シートに座りながら各部に打診した。
「では全艦ボソンジャンプ体制に移ってください。
 イネスさん、そちらは大丈夫ですか?」
『大丈夫よ』
ナデシコBではイネスが既にジャンパーシートに着席していた。
「アキトは用意いい?」
『ああ』
ユーチャリスのアキトは言葉短げにそれだけを答えた。敵機ナイチンゲールとの対決を邪魔されて少し不服そうであったが。

「それでは全艦ボソンジャンプに移ります!!」
「了解」
全艦の操艦を任されていたラピスは復唱した。

その瞬間、ナデシコ艦隊の三隻はボソンのキラメキに包まれた・・・。



ナイチンゲール・コックピット


「よし、敵が跳躍を行う。
 イメージ伝達トレーサー動作開始!」
『了解!』
西條は母艦に対して指示を送った。

「ははは!
 地獄の底まで追いかけて追いつめてやる!
 ナデシコ!!」
西條の顔は既に獲物を刈る狩人のものであった・・・。



ボソンアウト地点


そこに誰かが存在していたなら海上に現れる三つのボソンのキラメキを眺めることが出来たであろう。

「ジャンプアウト完了いたしました〜」
ユキナがやっと安心した声で報告した。
「一時はどうなることかと思ったけど」
同じくミナトもいつものお気楽な声をだす。

だが・・・・・・

「まだです!!」
「え?」
ルリの緊迫した声に一同が目を丸くした。
「まだ、リンクが切れていません!
 来ますよ!!」
ルリは警告を発し、ユキナは慌ててコンソールにかじりついた。

「ボース粒子増大!多数です!!」
「なに!?」
ユキナの報告に全員が仰天した。

あり得ない。
確かにナデシコはB級ジャンパーでは跳躍できない長距離をジャンプしたのだから。

しかし彼らの眼前にはボソンのキラメキを伴って多数の機影が実体化しだしたのだ。

別動部隊が至近距離からジャンプアウトしてきたのか?

いや違う。

なぜなら一番最初に実体化した機影には確かに皆見覚えがあったのだ。
間違えようもない。
先ほどアキトのブラックサレナと死闘を繰り広げていた敵の最新型の機動兵器・・・

死告鳥・・・ナイチンゲール

そしてその後ろには戦艦、駆逐艦など次々とジャンプアウトしてきたのだった・・・。

その瞬間、ナデシコの利点はすべて剥ぎ取られた。
不敗神話が崩壊した瞬間であった・・・。

See you next chapter...



ポストスプリクト


ってことで激闘編第2弾の前半はどのような感じでしたでしょうか?
私はこういう戦略ものが大変好きです。
たとえば銀英伝であったり、TV版18話の深く静かに戦闘せよなどのような作品が好きだったりします。

だからこの激闘編はそういった知恵と知恵の出し合いといった類のお話を中心に進めていきたいと思います。
ああ、またオリジナルメカのナイチンゲールに関してはまだまだ秘密がありますのがストーリーに絡んできますので解説は追々に(笑)

あと、がんばれハーリー君、男になれ!
ということで試練など与えてみたりしています(苦笑)

次回も激闘が続きますのでお楽しみに〜〜
では!


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