アバン


昔とった杵柄で機動兵器を操ってはみたものの、最大の武器システム掌握を封印してまで使うなんてあんまり意味がないんじゃないの?

でもまぁ一部のマニアックな人達には好評のようだし、なによりアキトさんをびっくりさせられたのでよしとしますか。

問題点とかは山積みですがとりあえずは一息ついて休息の時間を楽しませていただきます。

ああ、一応このSSってPrincess of White とDC版The Missionの続編ですので
よろしく



ナデシコC・ホシノ・ルリ自室


ホシノ・ルリの朝は早い。
『ルリちゃん、朝だよ』
「むにゅう〜〜はい・・・」
目覚まし時計から聞こえるアキトの優しい声でお目覚めだ。アキトの声はまだアキトたちと3人で暮らしていた頃に録音したものだ。
低血圧で朝の苦手な彼女にとって最近はこれがないと起きれない。

「アキトさん、おはようございます♪」
むっくりと起きあがるとねむけまなこでフォトフレームに入っている写真を眺めるのがルリの日課だ。アキトとユリカとそしてルリの三人が写っている写真・・・皆とびきりの笑顔であった。

そしてやおら握り拳を作ると「今日こそは!」と一大決心をする。
ルリは恐る恐る写真に唇を近づけようとする。もちろんアキトの部分にである。
しかし写真の手前10cmのところで躊躇が入る。
『勇気を出すのよ、ホシノ・ルリ!あと一歩を踏み出す勇気が必要なのよ!!』
などと10cmと15cmの間を行ったり来たりしながら真っ赤になって悶えているルリであった。普段の凛々しい彼女からは想像できないがファンがみれば鼻血ものだろう。

そして迷うこと5分、ようやく踏ん切りのついたルリはゆっくりと写真に唇を近づけていった。
3cm
2cm
『アキトさん・・・』

「ルリちゃん!おっはよう!!」

ビクぅぅぅぅぅ!!!!!!!

「なにやってるの、ルリちゃん?」
「何でもありません。ははは・・・」
声の主ユリカに不思議がられたルリはあわてて写真を後ろ手に隠すと、何とか必死にごまかし笑いをするのであった・・・。

「まぁいいけど。それより今日はユリカの番なんだから、早くお部屋においでよ。
 もう準備できてるわよ」
「わかりました。着替えたらすぐに行きます。」
そう返事をして着替えを始めるルリ。
結局いつものようにぐずぐず悩んで時間切れとなり『写真のアキトへのキス』ができないルリであった。本物のアキトにキスが出来る日はいつ!!

・・・・・・

ルリの着替える手がすぐに止まった。
「ユリカさん、なに着替えるのを覗いてるんですか?」
ユリカのウインドウは消えずに残っており、やたらニコニコしてルリの着替えを眺めていた。
『うんうん、ルリちゃんかわいいねぇ。』
「・・・ユリカさん、なんかオヤジみたいです。」
『ええ!?せめて娘の成育を心配する母親って言ってよ!』
「着替えられませんから、早くオチてください!」
『はーい』
ユリカのウインドウが消えて疲れたようにため息をつく。ルリの朝は毎日こんな感じで始まったりするのであった。



Nadesico Second Revenge

Chapter16 ホシノ・ルリの華麗な一日



ナデシコC・テンカワ・ユリカ自室


さて、皆さんはホシノ・ルリの朝食は?と聞かれて何を想像するだろうか?

バターを塗ったトーストにスクランブルエッグ、少し厚めのベーコン
そしてグリーンサラダ、食後にはダージリンあたりのストレートティー
それをルームサービスで頼み、ベットの中で朝のメールチャックを行いながら優雅に食べる・・・なんてあたりが相場かもしれない。
しかし、これから見る光景を目の当たりにすると少々考えが変わるかもしれない。

「ご飯、水っぽいですねぇ。ちゃんとお水を計って入れました?」
半分お粥のようになったご飯がつまみ上げたルリの箸からポロポロとこぼれ落ちる。
「入れたよ、たぶん・・・・」
自信なさげに答えるユリカ。
「お味噌汁のお豆腐を賽の目に切るのは良いんですが、なんで5センチ角なんですか?」
まるで水炊きにでも入ってそうな豆腐をつまみ上げていぶかしげに眺めるルリ。
「あははは、大は小を兼ねるって言うし」
パク
「それならそれでもっと煮ないと、中がまだ冷たいですよ?」
「あう・・・」
ユリカも半なまの豆腐を口に入れてしょぼくれていた。
そして極めつけは・・・
「あの・・・昔の漫画の料理下手なヒロインにはお約束かもしれませんが・・・タクアンぐらい全部切り離して下さいます?」
輪切りのタクアンだが一切れ摘むとすべてぶら下がってきた。本当にお約束通りだった。
「うぐぅ、ルリちゃんってなんか小姑さんみたい・・・」
完全にいじけるユリカ。
「小姑と言われても困るんですけど、欠点を指摘しないと料理がうまくなりませんよ?」
「うぐぅ・・・」

さてさて、二人が何をやっているかというと「おいしい朝食を作れるようになろう!」計画の一端として変わりばんこに朝食を作りあって試食をしているのである。
事の発端は至極簡単である。
この前のナデシコCシェフ、テラサキ・サユリ嬢が料理に関してスランプになっていたときにアキトが優しく諭したという話を彼女達は小耳に挟んだのだ。
後の彼女達の発想は単純であろう。

想像その1:アキトは料理を作るのに頑張っている女の子に優しい
想像その2:しかしユリカやルリが料理が下手なので、料理を頑張っていないように思われている。
想像その3:もしユリカ達の元に返ってくる場合は彼女達に代わって料理をしなければいけないが、今のアキトには自分が満足する料理が出来ないので遠慮している。

結論:ユリカやルリの料理がうまければ何の憂いもなくアキトは帰ってくる!!!

まぁ、この「風が吹いたら桶屋が儲かる」論法が現実になるかはともかく、彼女達は手始めに朝食の練習に取り組んだのだった。

「ルリちゃんはそうは言うけどさぁ、これでもだいぶうまくなったんだよ?」
ユリカが言い訳がましく言う。
「確かに・・・最初の頃は食べれたものではありませんでしたからね」
「グサ!
 ・・・そういうルリちゃんだって・・・」
「グサ!」
ルリの辛らつな言葉に傷ついたユリカはお返しに言い返した。
「・・・すみません。互いに傷口をえぐるのはやめましょう。」
「そうだね・・・」
そう、かくいうルリも他人のことは言えない。
ルリの場合、形から入るタイプなのか、髪を結い上げて割烹着姿でびしっと決めて挑んだのは良いが、結局ユリカの作るものと大して違いのない出来映えのものばかりなのだ。
二人はうなだれながらお粥のようなご飯をすするのだった・・・



某放送局・Gスタジオ


今日は戦意高揚、プロパガンダの宣伝、世論の形成等々もろもろの事情により、ナデシコ艦隊副提督兼ナデシコC艦長のホシノ・ルリ中佐自ら民放TV番組のインタビューを受けていた。
本来こういう仕事は副提督であるアオイ・ジュン中佐の役目である。(というか対外的な折衝はすべて彼に押しつけられていると言った方が正しい)

しかし、企画をねじ込んできたものが元ナデシコ関係者であること。
宇宙軍も民意を味方につけるには電子の妖精として人気の高いルリを使いたかったという思惑があったこと。
そして何より対峙するインタビュアーを相手にした場合、提督のユリカや副提督のジュンに任せてたら何を聞き出されるかわかったものではなかったからだ。アキトなど会わせたくもなかった。
必然的にそういったクリティカルな作業はすべてルリに回ってくるのは仕方のないことであった。
とはいえ・・・

「どうも♪メグミ・レイナードのむうむうツールボックスの時間です!
 本日のゲストはあの最年少美少女艦長、電子の妖精こと地球連邦宇宙軍ホシノ・ルリ中佐です!!!」
「どうも・・・」
ウインドウの中のルリは無愛想にぺこりと挨拶する。

「スタジオに起こしいただいて直接お会いしたかったのですが、さすがに非常体制ということで艦隊からの直接生中継でお伝えします」
『・・・これ録画じゃ・・・』
「カット!!」

本日既に10回目の取り直しである。周りのスタッフは辟易していた。

「ルリちゃん〜〜」
『すみません。メグミさんみたいにTVのお約束に疎いもので・・・』
「うう、なんかさっきからわざと間違われているような気がして仕方ないんだけど・・・」
『気をせいですよ』
気のせいなどではなく、やる気満々である。昔のツテだけで押しつけられた・・・ということもあるのであるが、それだけならルリもこんな大人げないことはしないのである。
ルリにとってメグミは仮想敵No1にランクされていた。
なにって?アキト争奪戦のである。

ちなみにNo2は後ほど紹介するとして、No3以下はエリナ、ラピス、ユリカと続いて要保護観察がリョーコ、イネスと続くのであるが、それは余談である。

ルリ自身、メグミがアキト争奪戦に復帰した場合に一番の強敵になると判断しているからだ。ユリカやラピスのように性格を読んで操る・・・みたいなことはメグミにとって通用しない。
それだけにルリは絶対アキトの情報を渡してなるものかと臨戦態勢全開だった。

メグミ「そういえば最近ルリちゃんってお料理にこってるそうですね?」
ルリ 『ええ、まだまだ下手ですけど・・・誰から聞いたんですか?』
メグミ「(誰って・・・突っかかるわね)サユリちゃんからですよ。よく味付けの相談を受けてるって。」
ルリ 『(サユリさん、お仕置きポイント+1です)ええ、彼女の教え方ってわかりやすいですから。』
メグミ「(自然に、さりげなく、遠回しに)ふうん、でも艦長やってて疲れてるのにお料理なんてすごいねぇ。」
ルリ 『(探りを入れてきましたね)まぁ、女性のたしなみですから。』
メグミ「(揺さぶりをかけてみましょうか)そうよねぇ、女の子なら好きな人のために手料理の一つも上手に作りたいものね」
ルリ 『(仕掛けが早いですね。ではお返しに)そんな人はいませんよ。とりあえずは殺人シェフのレッテルだけははずしておきたかったので。
 で、メグミさんは料理しないんですか?』
メグミ「(く、それって私が殺人シェフって言ってるようなものじゃないの!)あははは、仕事が忙しくてなかなかお料理に手がでないのよ。ルリちゃんを見習わないと。」
ルリ 『(よし、このまま押し切ります!)メグミさんもお料理を食べさせてあげたいと思う男性の方はいらっしゃらないんですか?食べさせたい相手がいらっしゃれば上達は早いですよ?』
メグミ「(それじゃ、私に男がいないみたいに聞こえるじゃないの!)うふふふ、それがいないんだなぁ。仕事が忙しくて。」
ルリ『(トドメです!)この前の方は料理が上手かったそうですが、教えてもらえなくなって残念ですね。』
メグミ「(怒!!!!!!!)大きなお世話です!!!!」

その後、スタジオがどうなったかは推して知るべし。
結局その日のむうむうツールボックスはほとんど編集のしようがないほどNG連発の画像になってしまった。しかし、前宣伝が災いして再録もままならないまま期日は目の前に迫り、日を追うごとに放送の要求と期待が強まり、やむなくプロデューサーはありのままを放送した。
次の朝刊に「メグミフラれる!」という見出しが踊ったのは言うまでもない。



ナデシコC・食堂


「手を合わせていただきます」
「「いただきます」」
ルリの少し遅めの昼食はユリカとラピスで食べる。数少ないラピスとのコミニュケーションの時間だった。
「ほらほら、ラピスちゃん。チョコパフェだよ。
 食べて食べて」
「うん、わかった。」
ユリカは必死にラピスを餌付けする。少しでもアキトの情報を知りたいからだ。

「それはいいんですけど、ユリカさん?
 私やラピスと同じ量を食べてて問題ないんですか?」
「え?」
「私やラピスは太らない体質だからいいんですが、
 ユリカさんの体重って確か・・・」
「わぁぁぁぁぁぁ!!!!
 ダメダメダメダメダメダメダメ!!」
誰かがどのくらい?って聞いたが無論答えられる訳もない。
そこらへんの乙女に聞かせたら彼氏にフラれるからと泣いて謝るぐらいである。

本日の彼女達のメニューはナデシコCのシェフであるサユリ特製の麻婆豆腐である。しかしその直後にチョコパフェを食べる彼女達って一体・・・。

「ごちそうさまでした」
「「ごちそうさまでした」」
と、あいさつもそこそこにユリカは席を立ちあがった。
「ユリカさん、どこに行かれるんですか?」
「ちょっとイネスさんのところに・・・」
ちょっとユリカが言葉を濁すのを不審に思うルリ。

「何か病気ですか?」
「ううん、いつもの健康診断。
 ほらほら、遺跡に融合させられていたから念の為にって」
「で、どこか悪いところでもあるんですか?」
「ない!ない!
 私も仕方なしに行くんだよ。仕方なしに・・・」
必死に誤魔化そうとするユリカであるがルリは不審がる。
「そうですか?そのわりにうれしそうですねぇ」
「ギク!・・・・そんなこと、ないよ・・・」
「顔が緩んでますよ」
「嘘!」
「嘘です」
「ルリちゃん・・・
 んじゃ、そういうことで!!!」
「あ、ユリカさん。ちゃんと会議には出てくださいね!!」
ボロが出ないうちにユリカはトットとずらかった。

「なんか怪しいですね・・・。ラピスは知りませんか?」
「・・・知らない」
ラピスはチョコパフェと格闘しておりそれどころではなかった。
「ユリカさんとイネスさんが何を企んでるかあとで調べておきますか・・・」
ルリは溜め息をついて、一人仲間外れされたみたいで不貞腐れたのであった。



ナデシコB・シミュレーションルーム


「テンクウ少佐、いつも訓練につきあっていただいてすみませんね。」
「いえいえ、私もちょうどいい練習になって助かってますよ」
そうにこやかにシミュレータを出てきたルリとテンクウ・ケンだった。
ホワイトサレナを無人操縦するために以前からケンにエステバリスの操縦訓練を受けていた。昔とった杵柄とはいえやはり訓練しないことには上手に操れはしなかったからだ。
結局あれ以来毎日30分以上はケンに練習につき合ってもらっていた。

「それよりも今日のシミュレーションはどうでした?
 終盤あたりの牽制の仕方が少し甘かったような気がしますが」
「そうですねぇ、狙いそのものは悪くないですよ。ただし流動的な乱戦状態では使いどころが難しいですねぇ」
「そうなんですよね。Jrの持ってるここらあたりの行動コストテーブルを修正しないといけないかもしれませんね」

『・・・・・色気がない』
陰で二人の行動をのぞき見ていた出歯亀達はがっかりしたが真面目の代名詞の二人が並べばまぁこんなものだろう。しかし彼らはもっとおもしろいイベントの方を楽しみにしていた。

「か・ん・ちょう!おつかれさまです〜〜〜」
抱き!
「か、カザマツリ軍曹?」
ケンの首に抱きついてきたのはショートカットのおかっぱ頭がかわいいナデシコB通信士のカザマツリ・コトネ軍曹(Second Revengeオリジナルキャラ、初登場!)であった。

「お疲れでしょう?ハイ、タオルです」
「そ、そんなに汗をかいてませんから・・・」
「あの・・・コトネさん・・・」
「ノドが渇いたでしょう?ハイ、スポーツドリンクです。」
「そんなにノドは渇いてませんから・・・」
「ピク!」
ケンは途端に不機嫌になったルリの視線に焦りを感じ、必死にコトネを振り払おうとするが、そんなことかまわずにコトネは世話女房よろしくケンに甲斐甲斐しくいらぬ世話を焼いていた。

「あの・・・コトネさん・・・」
「ええと。それからそれから・・・」
「ピクピク!!」
もう一度、今度は少し不機嫌気味に声をかけたルリであったが、やはり無視されている。たぶんコトネは意図的に無視しているのだろう。

仕方ないのでルリはボソッと脅し文句をつぶやいた。
「給与査定を下げますよ・・・」
「ああ、いらっしゃったんですか?元艦長!」
なんか、「元」というところを思いっきり強調するコトネ。
「なんかわざとらしい反応ですねぇ」
「そんなことありませんよ。おほほほほ〜〜」
ルリの冷淡な睨みに全く怯むことなく、コトネは軽く受け流した。

『コトネさんってこういう人だったんですね・・・』
ルリは心の中でため息をついた。
カザマツリ・コトネ軍曹はナデシコBが試験戦艦として竣工してからのクルーだ。当然初代艦長であるルリとも旧知の仲だ。その当時は猫をかぶっていたのか、至極まともな人に見えていた。
少なくともルリの前では。
しかし男が絡むとこうも性格が変わるものだとは思わなかった。
まぁ、性格がつかみきれなかったのは仕方ないかもしれない。

アキトやユリカの事件のことで精神的に余裕がなかったこと
ルリが初めて艦長に任ぜられ、なれない戦艦運営で四苦八苦していたこと
ワンマンオペレーションの試験の関係上、どちらかと言えばルリの方がモニターされる側にいたこと
そして何よりめぼしい男性陣がいなかったこと。
(軽薄そうなサブロウタやまだお子様なハーリー、40過ぎの男やもめのフジタなど)
そういった諸々の事情にコトネの本性を見破るタイミングがなかったのだが、それも後の祭である。
案外ルリが一番苦手なのはメグミにしろ、コトネにしろ、こういうごく普通の現実的な女の子なのかもしれない。

「艦長、はいアーンして」
「やめて下さい、カザマツリ軍曹〜〜」
『ピクピクピク!!!!』
コトネがケンに無邪気に甘える度にルリの周りの気温が下がり続けたが、コトネはお構いなしである。

そう、お察しの通り仮想敵No2は誰あろう彼女カザマツリ・コトネなのである。しかし何故か『アキト争奪戦』のNo2になっているかは不思議なところである。
ミナト・ハルカに次のように問われて
「ルリルリも恋い多き女だねぇ」
「は?何のことです」
と首を傾げているところが、イマイチ自分の恋愛感情に気がついていないようである。



ナデシコC・会議室


今日も作戦会議は行われる。
議題は先日の火星の後継者達との戦闘の反省会である。
とはいえ、全体にはいつもと同様である。
あいかわらずアキトは会議には現われず、エリナが代理できていた。当然ユリカはやる気をなくしている。ジュンは議事進行役に徹しているし、そうなるとルリとゴート、ケンあたりが活発に議論して終わりである。

取り敢えず無難な線で話し合いが終わり、会議は終了した。
しかし今日はルリがエリナを引き止めた。
「エリナさん、ちょっとお話ししたいんですけどいいですか?」
「なに?ホシノ・ルリ。」
「ちょっと個人的なお話しを・・・」
「・・・いいわよ」
エリナは少し溜め息をついて答え、二人は通路の影に場所を移動した。

「で、話ってなに?」
「ネルガル社内のネットワークの情報をさらっていたんですけど・・・
 エリナさんとアキトさんの噂なんですが。」
エリナはついに来たか、という顔をした。

アキトがユリカとルリの元に帰ってくるための一つの障害
・・・アキトとエリナの関係・・・

「ネルガル社内ではアキトさんはエリナさんの愛人という事になってますね」
「・・・」
「ブラックサレナやユーチャリス等、アキトさんへの支援はエリナさんが自分の情夫に対する個人的な支援・・・という噂になっているようですが、真実なんですか?」
「・・・」
エリナは終始無言だ。ルリはいくらかカマをかけてみる。

「エリナさんが公私混同するような人とは思えませんから、多分噂も面白おかしく流されているのでしょうが・・・もしご迷惑なら私が手を貸しましょうか?」
ルリの言葉は半分は本音である。
確かにエリナは生真面目な性格である。どうせネルガルの会長あたりの判断があっての支援であろう。でもその彼女が真面目にアキトのために尽力したにもかかわらずこういうスキャンダル的な評価しかされないのは確かにルリもかわいそうに思うし、何とかしてあげたいと思う。
でももう半分はアキトとエリナの関係を疑っているのもあるのだ。
何しろあのような惨い状況だ。荒むアキトを支えるために二人が男女の関係となっていても多分仕方ないかもしれない。
実質的に闇の王子様を今まで支えてきたのはエリナなのだから。
しかし・・・

「別にかまわないわよ。公式発表は『そういうこと』になるはずだから。」
「公式発表?どういう事です?」
ルリは少し驚いた。思ってもいない回答だった。
「つまりはネルガルとしては単に『月面責任者が愛人のために復讐の手助けをした』ってことになっているのよ。そういうストーリになっているの。真実がどうであろうとね。」
エリナがすごくサバサバして言う。

「大人の世界ってよくわかりませんが・・・なんか勝手ですよね。」
「勘違いしないでね。これは私がお願いした事なのよ」
「え?」
ルリは侮蔑の表情を浮かべて言ったが、エリナの言葉に意外な言葉に驚いた。

「アカツキ君は会社でひっかぶってやろうか?って言ってくれたけど私が断ったの。
 一つは会社の為に、っていう名目でやっちゃうと、いつ何時アキト君への支援が会社の不利益になった時点で手のひらを返されるかわかったもんじゃないから。」
「だからといって・・・」
「じゃぁ、あなたは重役達から政治的な思惑やら何やらの雑音を聞きたい?
 何の関係もないクリムゾンの工場を襲え・・・とか。」
「いえ・・・」
「だからこれは私と会社の取り引きなの。
 アキト君の支援には口を挟ませない。
 その代わりにそこから発生するテクノロジーを会社への還元する事と、全ての責任は私が取るということで。
 おかげで好き勝手にできたわ」
ルリは口を噤まざるをえなかった。エリナがどれだけの想いを背負ってアキトを支援しているか、それが痛いほどわかった。そしてそれが単に昔の仲間だから・・・などという生易しい絆で行われているのではない事に。

ルリがしばらく無言でいるとエリナは少し苦笑してルリに話しかけた。
「半分はそういうこと。でもあとの半分は私なりの打算。」
「打算?」
「そう。アキト君への協力が会社ぐるみで行われるとしたら、アキト君は今ごろトットと世捨て人になっているわ。」
エリナの自嘲気味な告白に対して、ルリは真実を気がついた。
「それって・・・」
「そう、アキト君は私の立場に気をつかって残ってくれているの。アキト君が失踪すれば私は会社にスケープゴートにされて社会的に抹殺されるってね。
 ずるいわよね、そういうアキト君のやさしさにつけ込んで自分の手元においているの。」
「エリナさん・・・」
「だから、別に軽蔑してもいいのよ?
 私はアキト君を繋ぎ止めるためなら会社だろうが何だろうが利用する。
 体で引き止められるものなら抱かれたっていいの
 それがたとえアキト君を苦しめる事になったとしても・・・」
エリナの言葉がルリに重くのしかかった。

そう、それが一番の不安だったのだ。
既にアキトが帰ってくる下地はできている。
アキトの指名手配は解かれているし、ラピスもルリやユリカに懐いてきた。
火星の後継者の残党を始末する役目は既に宇宙軍が引き継いでいる。
アキトの地位を擁護できるくらいにルリやユリカの発言力は強まった。

だが、エリナとアキトの関係が男女の関係ならば、
アキトがエリナに対して肉体関係を持っていて、友人以上の恋愛感情を持っていれば、
アキトはエリナや自分達に引け目を感じて帰ってこないのではないのか?

そのルリの苦悩を感じてかエリナはからかうように口を開いた。
「私とアキト君の関係が気になる?」
「え?・・・いえそんなことは・・・」
「そんなに私がアキト君に抱かれたかどうかが気になるの?」
「・・・」
あまりに直接的に聞かれてルリは赤くなる。からかう様に言うエリナは急に真顔になった。

「でもね、それはこの際あまり重要じゃないのよ。」
「重要じゃない?」
「そう。あなた達がそんなことがあったかもしれないアキト君を受け入れられるかどうか。
 そんな彼と元の家族ゴッコを続けていくだけの覚悟があるかどうかよ。
 だって、たとえ真実がどうであろうとも公式的には『テンカワ・アキトはエリナ・キンジョウ・ウォンの愛人』なんだから。そんな世間の視線を感じて生きていかなければいけないのよ?」

そう、アキトとエリナが男女の関係であった場合、自分はアキトを許して元の家族として暮らしてゆけるのだろうか?そしてユリカはどうなのだろうか?
または、たとえ許せたとしてもそれが世間に目にはどういう風に写るか、その視線に自分達は耐えていけるか?
エリナの言わんとしていることはつまりそういうことである。

「まぁ、思い詰めずに気長にやれば?」
エリナが去っていく声を聞きながらルリは答えの出ない問題を悩むのであった・・・。



ナデシコC・食堂


夕食はユリカとルリの二人きりである。ラピスはユーチャリスでアキトと一緒に食事である。
ルリはふとユリカの顔色をうかがいながら食事の手を止めた。
『あなた達は私と関係のあったかもしれないアキト君を受け入れられるの?』
エリナの言葉がルリの心に突き刺さっていたのだ。
ユリカがもしアキトとエリナがそういう関係にあるとしたらどういう反応をするのだろう?
そしたらこういう家族ゴッコは終わりになるかもしれない。

・・・また一人になる・・・

そう思うとルリはゾッとした。するとユリカはふとルリの顔を覗きこんだ。
「どうしたの?ルリちゃん。」
「いえ、何でもありません・・・」

そんなルリの不安を見透かしたのか、それとも事情を察したのか、ユリカは言う。
「大丈夫だよ。アキトはきっと帰ってくるから」
「ユリカさん・・・」
「私達が帰ってくるって信じないとアキトは帰ってこないよ?」
「だけど・・・」
「アキトはアキトだよ。どんなに見た目が変わっても。
 私達の王子様・・・
 だからね、信じてあげようよ」
ユリカはとびきりの笑顔でルリを励ました。
「はい!」
意外にもルリがユリカに支えられているという事実を知る人は少なかった・・・。



ナデシコC・ホシノ・ルリ自室


パジャマに着替えるとルリはベット脇のフォトフレームに視線を移す。
「アキトさん、ユリカさん、お休みなさい。」
ルリは写真の中の彼らに挨拶するとベットの中に入った。

明日からはまた戦いの日々
でもどんな困難でも乗り越えられそうな気分で眠ることが出来た。

See you next chapter...



ポストスプリクト


ルリ萌え度200%(当社比)でお届けしました今回のお話ですが、いかがでしたでしょうか?
どこが華麗だって?ごもっとも。
まぁ、所詮私がやるルリラブな話ってこんなものです。ハイ。

やっと出ました、メグミさん。今回の出番はあれだけです。>Enopiさん
そのうち活躍しますよ。???編で(爆)

大塚さん、メグミの番組名をお借りしました。CMのイントロは私には上手に真似る自信がなかったので割愛しました。(笑)

とはいえ、完全に脳天気なお話にするつもりが、少しシビアなお話が出てきてしまったのは私の性分なんかしら?

それよりも新キャラのコトネはどうなんでしょう?(苦笑)
これからルリの強力なライバルになるんでしょうか?
そろそろナデシコBの面々を活躍させないといけないのですが・・・(ハーリーやジュン、フジタなど)

とまぁ、いろいろありますが、次回からまたシリアスなお話になりますのでよろしくお願いします。

では、次回まで


BACK ・ NEXT

EXZS様のお部屋へ戻る
投稿小説のお部屋へ戻る
TOPへ戻る